専門情報検索 お試し版

咬合の挙上

【読み】
こうごうのきょじょう
【英語】
Bite raising
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
人為的に患者の咬合高径をあげること。咬合高径が著しく減少した症例に対して行なわれる。1930年代に耳鼻科医Costenらは、歯の喪失や咬耗によって低位咬合になると、顆頭が下顎窩の上方または後方へ置換され、この部分の骨を圧迫すると考え、顎関節症の原因として関節部に働く外力を重視した。Costenは、このようにして顎関節領域に引き起こされる一連の症状に対して、Costen症候群という名称を与えている。
そして、その治療法として咬合を挙上し、顎関節に加わる圧を減ずることを推奨した。そのため一時咬合の挙上が盛んに行なわれた時代があった。しかし、その後、顎関節症の本態が究明され、咬合の挙上だけでは顎関節症は治癒しないということが証明され、むしろ不用意な咬合の挙上によって不都合な結果の生じることが指摘されるようになり、この方法は否定された。今日では、咬合の挙上による顎関節症の治療法は古典的なものとなっている。
咬合の挙上は明らかに垂直顎間距離が減少して障害が生じたときにのみ適応する。咬合高径は患者の筋をはじめとする諸組織によって決定されるため、その決定は容易ではない。石原(1972)は、咬合高径を約5mm挙上した症例で、新しい安静空隙が生まれたことを確認し、患者の垂直顎間距離にある程度の幅があることを示している。咬合の挙上のもっとも一般的な方法は、レジン製の可撤性装置を咬合面に装着し、来院ごとに少しずつ即時重合レジンを盛りたし、徐々に患者に順応させながら適切な高さに挙上し、最終的な垂直顎間距離を探し出す方法である。挙上量は、患者の感受性や適応性によっても異なるが、普通、1回に0.5~2.0mm程度が適切であるとされている。とくに鋭敏な患者の場合は1回の挙上量を0.5mm以内にとどめ、急激に咬合を挙上することは避けたほうがよい(保母 1974)。