咬合湾曲形成法
- 【読み】
- こうごうわんきょくけいせいほう
- 【英語】
- Determination of occlusal curvature
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 補綴物の咬合平面を決定するための補助的方法。咬合平面分析板occlusal plane analyzerを用いる方法と、テンプレートtemplateを用いる方法の2つがある。
咬合平面分析板を用いる方法は1924年にWadsworthによって考案された方法である。咬合器の上顎フレームに咬合平面分析板と呼ぶプレートを矢状面と平行に取りつける。ここに顆頭中心と切歯点までの距離を半径とする円弧を、顆頭中心と切歯点からそれぞれ描き交点を求める。Wadsworthは、この交点がスピーあるいはモンソンの中心に一致するとし、これを中心として上下顎歯間に顆頭中心と切歯点までの距離を半径とする円弧を描き、この円弧に咬合平面を一致させれば、スピーの湾曲あるいはモンソンの球面に沿った人工歯の排列が行なえると考えた。しかしスピーの湾曲が顆頭中心を通るという解剖的根拠がないこと、モンソンの球面が架空のもので事実とは異なること、などの理由から、この方法により設定された咬合平面は現実の口腔に調和しないことが多かった。
1960年になると、こうした欠点を解消すべくさまざまな改良が試みられた。Goodfriendら(1963)はKirkの方法を発展させ、切歯点を中心として描いた円弧上で、中心を前後にずらすことにより大臼歯部の咬合面の高さを上下させ、実際の歯列に合わせる方法を紹介している。これにより咬合湾曲形成法が有歯顎でも実効性を発揮するようになった。測定点の設定法にも改良が加えられ、前方測定点には審美的な観点から切歯点に変わり下顎犬歯の遠心隅角部を、後方測定点には機能的な観点から下顎第2大臼歯の遠心頬側咬頭頂が使われるようになった。しかし咬合平面の湾曲半径については、ボンウィル三角とモンソンの4inch球面をそのまま踏襲し改良が加えられていない。症例により半径を±0.5inch変更してもよいとしている程度である。この方法はP.M.S.テクニックに採用され、咬合平面の分析、支台歯咬合面の削除量と理想的咬合平面の決定などに用いられている。
テンプレートを用いる方法は、径4inchの球面をもつ湾曲板を使って咬合平面を決定する方法で咬頭平面分析板を用いる方法を簡易実用化したものである。咬合平面を矢状面と前頭面上で分析することができ、スピーの湾曲とウィルソンの湾曲を同時に付与できる。その形態的な根拠はモンソン球面によるが、繁雑な測定操作を省き、歯列にあてるだけで簡単に咬合平面を決定できるのが利点である。
これら2つの方法は、いずれもその形態的根拠として、ボンウィル三角、スピーの湾曲、モンソン球面そしてウィルソンの湾曲を用いている。そのため咬合平面を付与するときの決定的な方法とはならないが、実際的な術式が確立されていない現状では、これを参考として用いざるをえない。
⇒咬合湾曲