咬頭干渉
- 【読み】
- こうとうかんしょう
- 【英語】
- Cuspal interference
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 下顎の開閉運動や偏心運動に際して発生する咬頭の衝突。英語ではcuspal interferenceと呼ばれてきたが、GPT-6では、deflective occlusal contact(偏心性咬合接触)と呼称が変更され、歯を変位させたり、下顎を通常の運動路からそらしたり、可撤性義歯をもとの位置からずらす咬合接触、と定義されている。咬合異常の原因として中心位の早期接触と非作業側咬頭干渉が重視されている。
小林ら(小林 1985、89、91、92、Kobayashiら 1991、武田ら 1984、90、石原ら 1990)は“実験的咬合干渉”を付与することにより、咬合問題が存在すると、生体にどのような影響が及ぶかについて詳細に調べている。その方法は、多数のなかから厳選した20歳代の正常者7名の下顎第1大臼歯咬合面に、日常臨床で術者が見落としやすい厚さ100μm(0.1mm)の小さな実験的咬合干渉を付与し、付与前、付与後1週間とさらに除去後1週間について、小型無線テレメータシステムを用いて夜間睡眠中の生体現象を終夜連続記録するとともに、経日的な臨床所見や咀嚼系の機能状態を合わせて分析したもので、さらに実験期間中における血液と24時間尿を定量分析するとともに、精神内分泌反応(情動)についても観察した。
その結果、実験的咬合干渉を付与すると、咀嚼筋の鋭敏かつ異常な緊張が順次増大し、1週間以内に中等度の顎関節雑音を含む顎関節症と同等もしくはそれ以上の程度の機能障害症状が発現した。同時に、即日減少した咬合接触面積は、順次増大し、1週間後では、ほぼ正常レベルに回復したが、下顎最後退位における顆頭位は、順次に偏位した。すなわち歯の早期移動と下顎偏位が認められた。また夜間睡眠中のブラキシズムは、順次増大し、1週間後では、高度に有意な増加が認められるとともに、このブラキシズムによる末梢性の筋疲労も示唆された。さらに交感神経の活動亢進、睡眠時無呼吸の発現頻度の有意な増加とともに、睡眠障害や情動ストレスが認められた。これらの所見は、いずれも実験的咬合干渉を除去すると、1週間後には、ほぼ正常レベルに回復する傾向が認められた。
以上の結果に基づき小林らは、実験的咬合干渉が睡眠障害、自律神経系の機能の変化、情動ストレスをともなってブラキシズムを誘発または増大、かつ持続させ、顎関節症を発症させることが明らかである、と述べている。さらに顆頭位の推移は、円板の後方付着部組織が咬合問題で誘発または増大されたブラキシズムによって早期に障害され、結果として前方への円板転位が惹起されやすく、また顆頭偏位が顎関節症の発症に関連するという知見を十分肯定しているものと考えられる、としている。
⇒下顎の偏位、早期接触、偏心位の咬頭干渉