行動変容
- 【読み】
- こうどうへんよう
- 【英語】
- Behavior modification
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- ⇒行動認識療法
頭蓋下顎障害に対する治療手段のなかで、習癖や行動様式を改変することはもっとも重要な部分を占める。可逆療法のひとつで治療のもっとも初期から応用することができる。
行動認識療法は、物事に対する態度、洞察、認識法、思考パターンを変更させることに主眼をおいた療法と定義される。これには行動変容behavior modificationが含まれる。行動変容は、行動変革療法とも呼ばれ、OPG-3によれば加わる刺激に対し、観察可能な反応様式を新しいものに変えさせることを目的とする心理療法と定義されている。
問題が単純な場合には患者が自らの習癖に気づくことで簡単に改善できることがある反面、長期間にわたり持続した習癖を中止・変更するには、行動変容の訓練を受けた治療者により慎重に立案されたプログラムが必要となる場合もある。関与因子の改善のために患者のライフスタイルに対する大がかりな変更が必要とされることも多い。
朝起きてから翌朝起きるまでの丸1日の行動を筋骨格の使い方を主にチェックし、気づいた点があれば指摘し修正を促す。具体的には、頬杖、噛いしばりなどの習癖、口にものをくわえる動作、硬固食品の制限、仕事時の姿勢、家庭生活での姿勢、睡眠時の姿勢(睡眠体位)の改善などである。
習癖を変更させるには患者が自らの習癖について自覚すること、修正するための方法についての知識、修正することの動機づけが適切に行なわれることが重要である。この知識と注意深い細心な観察を行なうことによりある種の習癖は変えることが可能である。患者の日常生活に合わせた視覚指標(visual reminder)などの単純な形式でのフィードバックの方法について検討し盛りこむべきである(たとえば、家庭や自動車、あるいは職場など効果的な場所に小さな目立つ色のスティッカーを貼りつけて、視覚指標をみたときには常に、今、自分が噛いしばりなどの中止すべき習癖をしているか否かをチェックする習慣をつける)。フィードバックの対象物としては患者に習癖を自覚させ、改善させる助けになるものである必要がある。毎回の診療時に習癖改善の進歩状況について触れる必要がある。
行動認識療法を成功裏に行なうには、患者が医師に命じられてこれを行なうのではなく、専門家のアドバイスを受けながら疾病の関与因子をコントロールするという意義をよく理解することが何より重要である。患者はしばしば関与因子と原因因子を混同しがちで、この点、説明に際し強調せねばならない。たとえば、姿勢の改善を指導する患者には、顎関節症の原因が姿勢の悪さであると考えているわけではないが、現存する病的状態から離脱するためには有効であると説明することが必要である。一般的には、行動認識療法により、患者の局所的な外傷性作用を軽減し(内在性外傷を減少させ)抵抗性を増加させること、苦痛に対する全身的な抵抗性を増加させることが主眼である。行動認識療法の重要性に関する認識は今後においてより一層高まることが予想される。
⇒マネジメント(頭蓋下顎障害の)