専門情報検索 お試し版

作業側

【読み】
さぎょうそく
【英語】
Working side
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
側方運動中に下顎が移動する側。咀嚼運動中に食物が作業側歯列上に集められ圧砕および剪断などの咀嚼作業が行なわれるためこの名がある。GPT-6でも同様に定義されている。側方運動は一方の顆頭がわずかに外側方に移動しながら下顎窩内でボールベアリングのように回転し、他方の顆頭が前下内方へ滑走することによって発生する側方旋回様の運動である。この運動中に顆頭が回転する側を作業側と呼び、その反対側を非作業側という。作業側では、食物を咀嚼するときに強大な圧力を受けるため咀嚼筋がバランスよく用いられなければならない。咀嚼がはじまると、作業側の側頭筋後部筋束が収縮して作業側の顆頭を下顎窩の後方にしっかり保持し、その間に下顎の挙上筋群が強大な咀嚼力を加え、また非作業側の側頭筋後部筋束と咬筋の深部が働いて非作業側の顆頭を後上方へ移動させ咀嚼力を発揮させる。上下顎の歯による咀嚼運動の速度は、非作業側の外側翼突筋によって調節される。
側方運動は下顎の作業側へのわずかな移動をともなった不均整な旋回運動で純粋な回転ではない。側方運動中に作業側の顆頭は下顎窩内で回転しながらわずかに外側方にずれる。この運動により下顎は側方運動中に全体として作業側へずれる。このずれは非作業側でサイドシフトと呼ばれていたが、GPT-6からマンディブラ・トランスレイションという呼称に変わった。また作業側の顆頭の外側方への移動は従来ベネット運動と呼ばれていたが、GPT-6からラテロトゥルージョンlaterotrusionと呼称が変更された。
作業側顆路は一般に外側方へ移動することが多いためラテロトゥルージョンと総称されるが、前側方へ移動するときはlateroprotrusion、後側方へ移動するときはlateroretrusion、上側方へ移動するときはlaterosurtrusion、下側方へ移動するときはlaterodetrusionと呼ばれている。これら作業側顆頭の運動範囲は頂点の内角が60度、高さ3mmの円錐内に含まれ、その頂点は作業側顆頭の中心に、その軸はトランスバース・ホリゾンタルアキシスに一致する(Guichet 1969)。電子的計測結果によると、平均作業側顆路はトランスバース・ホリゾンタルアキシスに沿って外側方に向かう(保母 1982)。この運動は平均1.06mmのわずかな運動であるが、食物の咀嚼される側で発現するため、咬合面の形態に重大な影響を与えるとされてきた。
【作業側の咬合接触】
作業側の上下顎歯の接触滑走を認める咬合様式として、バランスド・オクルージョンとグループ・ファンクションがある。前者では非作業側の上下顎歯の滑走も容認されているため総義歯の安定に適している。後者は作業側に限って歯の接触滑走を認めるもので、天然歯にもっとも多くみられる咬合とされてきたが、厳密な意味で作業側の全歯が接触滑走する例は全体の8%にすぎない(保母、高山 1993)。一方、作業側の犬歯だけを滑走させ、残る歯を全部離開させる咬合様式としてミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョンがある。これは犬歯が顎関節から離れた位置にあり、薄くて緻密な歯槽骨中にしっかりと植立しているなどの解剖的優位性や、比較的多数の感覚受容体が存在するという生理学的優位性および霊長類において常に数が一定で支配的な位置にあり、機能が一定しているなどの人類学的優位性に基づいた咬合様式で、天然歯の理想咬合と考えられている。グループ・ファンクションは当初片側性のバランスド・オクルージョンと定義され、作業側では臼歯が離開せず非作業側だけが離開する咬合様式とされたが、GPT-6では側方運動の作業側で上下顎歯が複数同時接触し、グループとして咬合力を分散させる咬合関係と定義され、ミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョンにかなり近い内容になっている。