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スプリット・キャスト・マウント法

【読み】
すぷりっと・きゃすと・まうんとほう
【英語】
Split-cast mounting
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
咬合器上に取りつけた歯列模型のセントリックの精度を確認する方法。スプリット・キャスト・テクニックともいう。GTP-6では歯列模型の基底部にV字型のノッチ(溝)を刻み、マウンティング・リング(またはプレート)上のくさびと合わせてマウントする方法。この方法によりマウントの正確さを確認し、歯列模型の着脱を容易にすることができる、と定義されている。Needlesにより考案され、Lauritzenにより実用化された。この方法を用いるとセントリック・バイト採得時の誤差、石膏模型製作時の誤差、咬合器取りつけ時の誤差などが、±1/80mmの精度で確認ができるといわれている(Lauritzen 1974)。
スプリット・キャストと呼ぶ分割可能な特殊な形態に調整された上顎模型と、3枚のセントリック・バイトを用いる。上顎模型は次のようにして調整する。基底面を平滑に仕上げたあと、石膏刃でV字型のノッチを刻む。ノッチは既製のスプリット・キャスト・プレートを使用して付与することもできる。ノッチは深さ約8mm、幅約10mmで、基底面に対して40度のV字溝に形成するのがよい。ノッチは、普通、前歯部に1つ両側の臼歯部に1つずつ、計3個もうける。ノッチの幅が狭すぎたり、V字溝の斜面が45度以上になると、咬合器を閉鎖するときにノッチの部分に人為的な干渉が現われる危険がある。またノッチの数が多すぎると接触関係が複雑になり、他のエラーが入りこみやすくなるので注意を要する。このようにして仕上げた上顎模型の基底部を第1次基底部と呼ぶ。次に第2次基底部をつくる。第1基底部に石膏分離剤を塗付し周囲をビニールテープで囲む。その内部に練和した石膏を流しこめば第2次基底部ができあがる。完成した模型を、第1次基底部と第2次基底部を一体にしたまま、フェイスボウ・トランスファして咬合器に取りつける。下顎模型はセントリック・バイトを3枚採得し、そのうちでもっとも正確と思われるものを使って咬合器に取りつける。
セントリックの確認は次のようにして行なう。まず上顎模型を第1次基底部から離し、2枚目のセントリック・バイトを使って上顎模型を固定する。咬合器の上顎フレームを閉じて、スプリット・キャストの第2次基底部と第1次基底部が正しく適合するかどうかを調べる。ノッチが正確に適合し、両基底部が均等に接触すれば、1枚目のセントリック・バイトと2枚目のセントリック・バイトは同一の精度をもつことが確認できる。3枚目のセントリック・バイトを使って同じ作業をくり返し、前の2枚と同じようにノッチが適合すれば、セントリックは正しく咬合器上に再現されたと考えてよい。いずれか1枚が不適合の場合は、そのセントリック・バイトの精度が疑われる。もし2枚のセントリック・バイトがいずれも不適合の場合はトランスファ操作中に誤差を生じた疑いがあるので、再度セントリック・バイトを採得し下顎模型の取りつけ操作をやり直す必要がある。セントリックの再現は咬合器の取りあつかい操作中でもっとも重要なステップのひとつなので、この方法はきわめて有効である。