切端咬合
- 【読み】
- せったんこうごう
- 【英語】
- Edge-to-edge bite
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 上下顎歯列弓の前歯部が正常なオーバーバイトとオーバージェットをもたず、咬頭嵌合位で上下顎前歯が互に切端で咬合するような咬合状態。切端咬合の原因としては、上顎骨と下顎骨の相対的成長の不調和や下顎骨の前方転位、上下顎前歯歯軸の相対的異常、上下顎前歯の萠出異常、人種差、そしてとくに前歯を使用するような食習慣などがあげられる。乳歯列後期には下顎歯列弓の前方移動と乳歯の咬耗により、切端咬合を呈することが多い。
切端咬合は偏心運動時の前歯誘導を欠如させるため、咬合学的見地からも好ましくないとされている。切端咬合は原始人にみられる典型的な咬合様式である。日本では縄文時代、古墳時代を通じて切端咬合(鉗子状咬合)を有するヒトが、ほぼ100%を占めていたが、鎌倉時代以降は徐々に被蓋咬合(鋏状咬合)をもつヒトが増え、現代ではほとんどのヒトが被蓋咬合を有している。こうした咬合の変遷は、生活様式の変化にともなって発生したと考えられている。鎌倉時代以前には、鉄器が一般家庭の生活に定着していなかったため調理法も原始的であった。こうした生活様式のなかで、硬くて粗く、歯の咬耗を引き起こしやすい、砂などが混じった食物を無理をして食べていたと考えられる。そのころは歯を道具として使うことも多かった。そのため、鎌倉時代以前のヒトの歯は著しく咬耗したのであろう。そして咬合高径は減じ、下顎は前方へ偏位し、切端咬合を呈するようになった。鎌倉時代以降、鉄器が普及し、咬耗を引き起こす物質が食物に混入するのが防がれるようになった。調理法も進歩したため、ヒトは柔らかい食物だけを食べるようになり、咬耗は未然に防止され、切端咬合は少なくなった。