側頭筋
- 【読み】
- そくとうきん
- 【英語】
- Temporal muscle
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 咀嚼筋のひとつ。側頭鱗外面と側頭筋膜から起始し、走行の途中で頬骨弓の内面でたばねられ、下顎骨の筋突起に停止する。停止部は腱でできており、内外斜線に沿って二脚に別れ、口腔粘膜にも付着している。この筋は三叉神経(第5脳神経)の第3枝下顎神経の深側頭神経によって支配されている。側頭筋は、その筋線維の走行から前部と中部と後部の各筋束に分けられる。前部では筋線維は垂直に走行し、この筋束が収縮すると下顎は垂直方向に挙上される。中部では筋線維は後上方に走行し、この筋束が収縮すると下顎は後上方に挙上される。後部では筋線維はほぼ水平に走行しているが、停止する直前に頬骨弓の部で下方に走行するので結果として、この筋束が収縮すると下顎は後上方へ牽引される。側頭筋は非常に強力な筋で、上下顎歯を噛み合わせてものを粉砕する働きに関与するが、この他にも下顎の位置を水平的ならびに垂直的に微妙に調節するのに役立っている。そのため、咬合異常が長期間にわたって放置されると、側頭筋のストレスが高まり、患者が頭痛を訴えることがある。
頭蓋下顎障害の圧痛検査において側頭筋は2または3の部位を調べることが通例である。前部、中部、および後部である。これら3部位について調べた吉浦ら(1993)は、術前の圧痛出現率は各々、53%、42%、17%、術後は10%、6%、1%で、3者間では術前には前部、中部、後部の順に圧痛出現率の差が認められ、術後では前部と中部との間の統計学的な差は認められなかったとしている。左右差について調べた橋口ら(1995)の報告では左右差は術後に前部(30部位中第3位)、中部(第4位)、後部(第24位)、の順で低下した。
側頭筋の圧痛は他部位と関連することが多く、三井ら(1993)の報告では側頭筋相互間の他に、咬筋浅部筋腹部、咬筋浅部停止部(ともに側頭筋前部と中部)との間にr5=0.43以上の相関が、また前部と頭頂部、顎関節後下方部、肩中央部、胸鎖乳突筋上方部などとの間に0.48~0.4の相関が認められた。