専門情報検索 お試し版

トランスバース・ホリゾンタルアキシス

【読み】
とらんすばーす・ほりぞんたるあきしす
【英語】
Transverse horizontal axis
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
中心位において、下顎が純粋な回転運動を行なう範囲にとどまっているときの回転軸。GPT-6では、矢状面内でその回りに下顎が回転する仮想軸、と定義されている。この定義では、トランスバース・ホリゾンタルアキシスは下顎とともに運動する下顎固定の軸とまぎらわしく表現されており、顆頭間軸と混同されるおそれがあるが、同じGPT-6の中心位の定義のなかに、“この位置は下顎がトランスバース・ホリゾンタルアキシスの回りに、純粋な回転運動を行なう範囲にとどまっているときの位置である”という記述があるので、トランスバース・ホリゾンタルアキシスは顆頭が下顎窩の前上方位(中心位)に位置し、かつ上顎基準座標系に固定された軸であると解すべきであろう。
トランスバース・ホリゾンタルアキシスは、McCollum(1939)が提案したターミナル・ヒンジアキシスに代わるものである。McCollumは下顎を最後方に強く押しつけて開閉運動を行わせると、10~12度(切歯点部の開口量にして16~20mm)の範囲で下顎が純粋な回転を行なうとし、そのときの回転軸をターミナル・ヒンジアキシスと名づけた。ターミナル・ヒンジアキシスは中心位の定義が最後退位から前上方位に移行するにともない過去のものとなり、代わりにトランスバース・ホリゾンタルアキシスがとって代わったが、この軸が顆路の最後上方端に位置し、顆頭間軸の後上方位置を意味している点では変わりがない。顆頭を前上方位に位置させたときに、下顎がトランスバース・ホリゾンタルアキシスの回りに純粋な蝶番回転運動を行なう範囲は明らかでないが5度前後、開口量にして約8mm程度とみこまれる。トランスバース・ホリゾンタルアキシスを臨床的に実測する方法はまだ提示されていない。
セントリック・バイトを採得する症例では、後方基準点の位置誤差が、セントリックの再現に無視できない影響を及ぼすことはよく知られている。後方基準点に平均値を用いたときに実測値との間に生じる位置誤差は最大±5mm前後とされている。後方基準点に±5mmの位置誤差があるとき、厚さ3mmのセントリック・バイトを用いて下顎模型をマウントし、その位置から咬合器を閉じると咬合位に最大400μmの無視できないずれを生じる(保母、高山 1995)。したがって開口位でバイトを採得する場合は、フェイスボウ・トランスファにおける後方基準点は平均値ではなく、実測値を用いなければならない。しかしトランスバース・ホリゾンタルアキシスを臨床的に求める方法は存在しないので、後方基準点を実測するときは、顆頭を関節窩の最後退位に押しこみ接面回転を生じさせる必要がある。そのためオトガイ誘導法を用いることになるが、これによって求められる水平基準軸はターミナル・ヒンジアキシスであり、トランスバース・ホリゾンタルアキシスではない。一方、セントリック・バイトの採得は、アンテリア・ジグやリーフ・ゲージを用いた前上方位で行なわれ、このときの水平基準軸はトランスバース・ホリゾンタルアキシスとなる。その結果、ターミナル・ヒンジアキシスでマウントした上顎模型に対してトランスバース・ホリゾンタルアキシスを用いて採得したセントリック・バイトで下顎模型をマウントするかたちになり、2つの水平基準軸を混用する結果となる。両者の差が誤差となって咬合位のずれを生じることが考えられるが、2つの水平基準軸を生じる顆頭の位置の差は平均0.25~0.30mmであり(保母、岩田 1984、Hobo、Iwata 1985)、この大きさの計測誤差による影響は3mmの開口位でセントリック・バイトを採得したとして中心位で最大24μm、偏心運動時における咬頭路では6μm前後にすぎない(保母、高山 1995)。したがって、セントリック・バイトを採得するときに2つの水平基準軸を用いることによる咬合位のずれは無視できる。
Luckenbach(1991)は、トランスバース・ホリゾンタルアキシスの位置を電子的に求め、開口運動にともなう顆頭の移動による誤差を補正するmathematical electronic methodを開発し、従来の実測法で求めたアキシスの0.5mm以内の精度を得たと報告している。これは電子的方法により従来の実測法なみの精度で、トランスバース・ホリゾンタルアキシスを測定できる可能性を示唆している。