内側翼突筋
- 【読み】
- ないそくよくとっきん
- 【英語】
- Medial pterygoid muscle
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 咀嚼筋のひとつ。下顎枝内面に広がる四辺形の比較的厚い筋で、翼突窩。上顎骨の一部、翼状突起の外側板から起始し、下顎骨内面の翼突筋粗面に停止する。三叉神経の第3枝下顎神経の内側翼突筋神経によって支配されている。下顎の閉口運動に関与し両側性に収縮すると下顎骨を上方に引きあげる。咬筋とは下顎枝をはさんで相対し、咬筋浅部とは形態、位置、機能などがよく似ている。内側翼突筋は咬筋と協調して、下顎骨の垂直的な位置の調節にも関与している。その走行が正中に対して斜めに向かっているため、片側性に収縮すると、側方運動中に非作業側の顆頭を内側に移動させるのを助ける点は異なっている。内側翼突筋は口腔内から筋腹部の下顎角部で停止部の圧痛を検査することができる。圧痛検査に関しては、咬筋浅部と比較して解剖学的に複雑なため、目的の筋以外の種々の構成要素を圧すこととなる。また外側翼突筋の圧痛検査部位として知られる上顎結筋の後外上方部を圧す際には、実際には内側翼突筋を介して外側翼突筋を圧すこととなる。
100例の顎関節症患者の術前術後について34の検査部位を比較した研究(波多野ら1996)では、口腔内の検査部位の筋腹部では圧痛の出現率は術前(98.0%)、術後(93.0%)ともに第2位と高く、また停止部では術前(87.0%)は第7位、術後で第11位と比較的高い出現率を示した。術前術後の差の検定では、停止部は34部位中第1位を示し、筋腹部は第14位であった。同じ100例の左右差について調べた研究によれば、左右差の減少傾向は停止部では中位、筋腹部では下位であった。これら2つの報告からは内側翼突筋では停止部のほうが筋腹部よりも良好な検査部位といえる。
→咀嚼筋、閉口筋