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日本顎関節学会の分類

【読み】
にほんがくかんせつがっかいのぶんるい
【英語】
Classification of TMJ problems by Japanese Society for TMJ Study
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
日本顎関節学会では顎関節症の疾病概念を、顎関節症とは、顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節(雑)音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患群の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋障害、間接包、靱帯障害、関節円板障害、変形性関節症などが含まれている、と定義(1997)している。
顎関節症の病態についてはFarrarらによる分類(1971)、McNeilらを中心としたThe American Academy of Orofacial Painによる症型の分類(1993)がなされているが、わが国においても1987年に顎関節研究会(現在の日本顎関節学会)による分類案が発表された。この分類によると、I型は、Laskin(1969)が提唱したMPD症候群(Myofascial Pain Dysfunction)に準じたもの、II型は関節円板や靱帯に微少な外傷が起こるとされる慢性外傷性顎関節症、III型は関節円板の転位や穿孔などをともなう顎関節内障に相当し、IV型は顆頭の吸収などの退行性変化をともなう変形性顎関節症に相当する。また、I~IV型のどれにも属さない症型として心身医学的要因などにより顎関節領域に異常を来たしたものを「その他のもの」としていた。
この分類には病態を表現することはできるが、実際はこれらの症型が複合している症例も多く、診断基準や処置方針を提示していないという問題点があった。
その後の学問の進歩を踏まえて、1997年には表に示す顎関節疾患の新分類および顎関節症の新分類が公表された。ともに英語が併記されたこと、顎関節疾患の新分類においては項目3の下部分類の順序が変更されたこと、項目4以下の内容に追加変更があったことが変更点である。顎関節症の分類においては障害の内容そのものが名称となったこと、従来は下部分類が示されていなかった関節円板障害が欧米にならって復位の有無により分類されたことなどが主な変更点である。
【顎関節疾患の分類(1996)】
1.発育異常(growth abnormality)
1)関節突起無形成(agenesis of the condylar process)
2)関節突起形成不全(hypoplasia of the condylar process)
3)関節突起過形成(hyperplasia of the condylar process)
4)先天性二裂下顎頭(congenital bifid condyle)
2.外傷(trauma)
 1)脱臼(dislocation)
 2)骨折(fracture)
 3)捻挫(sprains or strains)
3.炎症(inflammation)
 1)外傷性関節炎(traumatic arthritis)
 2)関節リウマチおよび関連疾患(rheumatoid arthritis and allied diseases)
 3)化膿性関節炎(suppurative arthritis)
4.退行性関節疾患あるいは変形性関節症(degenerative joint diseases、osteoarthritis)
5.腫瘍および腫瘍類似疾患(neoplasm and allied diseases)
6.全身性疾患に関連した顎関節異常(TMJ problems associated with some general diseases)(痛風、偽痛風など)
7.顎関節強直症(ankylosis of the TMJ)
8.顎関節症
注:上記各疾患を単独で用いる場合には顎もしくは顎関節をつけて表記する。

【顎関節症の分類(1996)】
1.咀嚼筋障害masticatory muscle disorders(顎関節症I型)
 咀嚼筋障害を主徴候としたもの
2.関節包・靱帯障害capsule-ligament disorders(顎関節症II型)
 円板後部組織・関節包・靱帯の慢性外傷性病変を主 徴候としたもの
3.関節円板障害disc disorders(顎関節症III型)
 関節円板の異常を主徴候としたもの
 a:複位をともなうもの
 b:複位をともなわないもの
4.変形性関節症degenerative joint diseases、osteoarthritis(顎関節症IV型)
 退行性病変を主徴候としたもの
5.その他のもの(others)
 以上のいずれにも分類されないもの
注:degenerative joint diseasesはosteoarthritisまたはosteoarthrosisとも表記する。