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ハノーH 2-O咬合器

【読み】
はのーえいちにぜろこうごうき
【英語】
Hanau H 2-O articulator
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
1921年、Hanauによって開発されたコンダイラー型の半調節性咬合器、ハノー・モデルHの改良型として1958年ハノー社から発売された。H2シリーズはH 2、H 2-O、H2-X、H 2-PR、H 2-OPR、H 2-XPRの6種からなるが、H 2-Oはシリーズのなかでもっとも広く普及した。主に総義歯補綴用に使用される。
基本的な構造はモデルH咬合器をそのまま受けついでいるが、次の点が改良されている。1)コンダイラー・ポストがモデルHよりも約20mm高い。2)コンダイラー・ポストを回転させて水平側方顆路角を調節するねじが、モデルHではコンダイラー・ポストの内側についていたが、後面に移された。3)オービタル・インディケータを取りつけるための小孔が、咬合器の上顎フレームにあけられた。
上顎フレームにはボールベアリングの組みこまれた顆頭球があり、下顎フレームのコンダイラー・ポストの上部にあるスロット状のコンダイラー・トラックにおさまっている。コンダイラー・トラックは閉鎖型であるため、上顎フレームと下顎フレームは分離できない。トラックの外方にはセントリック・ロック用のねじがあり、これを締めるとトラック下面から突起が出て顆頭球を固定し、セントリックが保持される。矢状顆路傾斜度と水平側方顆路角が調節できるが、再現される顆路は直線である。矢状顆路傾斜度は-30~+75度、水平側方顆路角(ベネット角)は0~+30度の範囲でそれぞれ調節できる。作業側顆路の再現機構はないが、側方運動時に咬合器の顆頭間軸が作業側の顆頭球から抜け出るようになっている。しかしその方向は咬合器の顆頭間軸上に規制されているため作業側顆路を正確に再現することはできない。顆頭間距離は110mmに固定されている。
咬合器の運動量の調節にはチェックバイトを用いる。矢状顆路傾斜度は前方位チェックバイトで調節する。咬合器の関節部上方についているねじ(サムナット)を緩め、コンダイラー・トラックの角度を変え調節する。ベネット角(L)は矢状顆路傾斜度(H)からL=H/8+12の公式を使って求め、コンダイラー・ポストの後下方にあるねじ(サムスクリュー)を緩め、コンダイラー・ポストを内側へ回転させ調節する。
切歯指導部は下顎フレーム前方に取りつけられている金属性の切歯指導板と上顎フレームを垂直に貫通する切歯指導桿から構成されている。矢状傾斜度は-20~+40度、側翼角は0~+40度の範囲で調節できる。この他にロング・セントリックを与えることを目的とした切歯指導板がSchuylerにより考案されている。この切歯指導板の中央には小孔があり、そのなかに上面が平坦になったねじが取りつけられている。このねじを調節することにより、約1.5mmの範囲内で切歯指導板を前後方向に移動できる。
切歯指導桿は直線で着脱可能である。上顎フレームが反転したときに安定するよう、切歯指導桿を延長させるエクステンションピンと呼ぶ部品が用意されている。この他咬合高径を変化させたときに、切歯指導桿の先端が前後的にずれるのを補うアジャスタブル・インサイザルピンもある。これは切歯指導桿の先端部に傾斜をもつ棒を取りつけ、長さが調節できるようにしたものであるが、咬合器の開閉運動軸に合わせて曲率彎曲を与えたものよりも精度的に劣る。
ハノーH 2-O咬合器には、専用のフェイスボウが用意されている。目測用のシンプルボウで、後方基準点には平均的顆頭点を用い、前方基準点は眼窩下点その他を用いる。その他、バイトフォークを支えるためのキャスト・サポート、下顎模型を咬合器に取りつける際に咬合器を逆さに保持するためのプラスタリング・スタンド、補綴物をリマウントするためのリマウンティング・レコード・ジグ、可撤性リマウンティング・プレートなど豊富な付属部品が用意されている。(株)モリタから市販されている。