ファンクショナル・カスプ
- 【読み】
- ふぁんくしょなる・かすぷ
- 【英語】
- Functional cusp
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- →機能咬頭
咀嚼運動中に対合歯の咬合面窩または辺縁隆線に対合し、食物を砕く働きをする咬頭。上顎の舌側咬頭と下顎の頬側咬頭をいう。非機能咬頭に対して用いられる用語。スタンプカスプまたは粉砕咬頭とも呼ばれる。上顎の頬側咬頭や、下顎の舌側咬頭のように直接、食物を粉砕するために働かない咬頭と区別される。機能咬頭は、対合歯と嵌合し、垂直顎間距離を保つために役立つ。そのため、この咬頭をセントリック・カスプと呼ぶことがある。しかし、すべての機能咬頭がセントリック・カスプとなるわけではない。上顎第1小臼歯の舌側咬頭、上顎大臼歯の遠心舌側咬頭、下顎大臼歯の遠心咬頭はいずれも対合歯に向かい合うだけで嵌合しない。そのためこれらの咬頭はセントリック・カスプとは呼ばない。
機能咬頭が咬頭嵌合位で対合歯と嵌合する状態により、カスプ・フォッサとカスプ・リッジの2種類に分けられる。前者は、機能咬頭が対合歯の咬合面窩に噛みこむ様式の咬合をいい、1歯対1歯の咬合関係となる。後者は、機能咬頭が対合歯の隣接面部辺縁隆線に噛みこむ咬合をいい、1歯対2歯の咬合関係となる。
上顎の機能咬頭は遠心にいくに従い、次第に低くなるが、非機能咬頭は偏心運動時のクリアランスを確保するために機能咬頭よりもさらに低く位置づけられており、遠心にいくにつれ、低くなる。その結果、生ずる咬合平面の前後的な彎曲をスピーの彎曲と呼ぶ。スピーの彎曲は前方運動時の咬頭干渉を防ぐのに役立つ。また非機能咬頭の高さが機能咬頭の高さよりも低くなっているために前頭面内で生ずる下方への凸状の咬合平面の彎曲をウィルソンの彎曲と呼ぶ。この彎曲は側方運動時の咬頭干渉を防ぐのに役立つ。
機能咬頭は、総義歯の咬合でも重視されている。Poundの提唱するリンガライズド・オクルージョンでは、上顎の舌側咬頭だけが機能咬頭として働き、下顎の咬合面窩と片側5点ずつで咬合する。下顎の咬合面はフード・テーブルとして使われ、上顎の舌側咬頭により加えられた咬合圧は、下顎の歯槽堤の中央に誘導され床の安定を図るのに役立つ。