平均値咬合器
- 【読み】
- へいきんちこうごうき
- 【英語】
- Average value articulator
- 【辞典・辞典種類】
- 新編咬合学事典
- 【詳細】
- 下顎運動の各要素を解剖学的平均値に固定した咬合器。GPT-6では平均的下顎運動に準拠した運動を行なうようにつくられた咬合器。分類上ClassIII咬合器に属する、と定義されている。非調節性咬合器に属する。代表的な平均値咬合器にはシンプレックス咬合器、ハンディ咬合器、ユニティ咬合器、デンタルホビー咬合器などがある。最初の平均値咬合器は、1840年にEvansによって考案された。この咬合器はアルコン型で、上顎フレームが固定され、下顎フレームが可動する特殊な構造をもっている。1859年に開発されたボンウィル咬合器の顆頭間距離はボンウィル三角の1辺と等しい値が与えられている。この数値はその後の咬合器の設計に大きな影響を与えた。1866年に、Balkwillは、ボンウィル三角と咬合平面のなす角度が平均26度であることを見い出し、これにバルクウィル角と命名した。以後、この角度は多くの平均値咬合器の設計に取り入れられた。1896年に、Walkerはクリノメータを使って矢状側方顆路傾斜度を計測し、その平均が35度であることを知り、ボンウィル咬合器の矢状顆路傾斜度を水平から35度に改め、ウォーカー咬合器をつくった。
1901年に、Gysiは特殊なフェイスボウを考案し下顎運動を測定した。得られた測定値を利用してギージー・シンプレックス咬合器(1914年型)を開発した。この咬合器の矢状顆路傾斜度は33度、水平側方顆路角は17度、矢状切歯路傾斜度は40度(または機種により10度、25度)、側方切歯路角は120度にそれぞれ固定されている。また顆頭間距離は100mm、ボンウィル三角の1辺は100mm、バルクウィル角は22度が与えられ、これらの数値は今日も利用されている。
平均値咬合器は操作が容易であるため広く用いられている。総補綴物に対する平均値咬合器の使用率は30%前後と推定されている。しかし咬合器の運動量を平均値に固定すると、その咬合器上で製作した補綴物は平均値よりも少なく下顎を動かす症例では有効に機能するが、それよりも大きく下顎を動かす症例では、咬合干渉を発生することになる。そのため、平均値に咬合器を固定することが必ずしも平均的に良好な咬合を与える手段にはならない。
→非調節性咬合器