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リポジショニング装置

【読み】
りぽじしょにんぐそうち
【英語】
Repositioning appliance
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
→前方整位型装置 
下顎を咬頭嵌位よりも前方の下顎位に誘導または位置づける口腔内装置をさす。前方整位型スプリントとも呼ばれる。リポジショニング装置(位置変更装置)repositioning applianceは、咬頭嵌合位を一時的または長期的に変更する目的で口腔内に装着される装置をさし、移動方向は問われないが、現在では前方整位型装置と同義語とされる。
前方整位型装置は関節痛、関節雑音(クリッキング)、頭蓋下顎障害の2次的症状としての筋症状を軽減することを目的として使用される。前方整位型装置の作用機序は2つに分けられよう。すなわち、下顎頭を前下方に位置づけることにより、
1)関節内の不適切な荷重(圧縮応力)を軽減する。
2)下顎頭と円板の位置関係の改善・変更を図る。
の2つである。
クリックが存在しても他の疼痛や開口障害などの症状をともなわない症例については治療対象とすべきではない。
前方整位型装置が応用できない場合にはスタビライゼイション装置と、疼痛軽減や機能増進のための補助療法が適応となる。通常は、スタビライゼイション装置ではクリッキングを消失させることは不可能な場合があるが、軽減させることは可能である。
前方整位型装置は上下いずれかの歯列の咬合面を完全に被覆するもので、咬合面に対合歯の圧痕または誘導ランプ(土手状の誘導斜面)、あるいはこれら両方が付与されており、これにより下顎を一時的に、顆頭‐円板‐関節窩の関係を治療するための下顎位(治療顎位:疼痛の少ない位置)としての前方位に導くものである。
前方整位型装置を上顎に適用する場合と、下顎に適用する場合の違いは、上顎に装置を設計する場合には付与される誘導面は近心傾斜面mesial upper、MUで、通常は下顎前歯の舌側面に対向するように設置される。審美性には劣るが、誘導面の先端を下顎の場合よりも延長することが可能で、とくに顎位のディスクレパンシーの大きい症例、就寝時に使用する装置として有利である。下顎のすべての歯は装置の提供する中心咬合位において切縁、尖頭、咬頭の頂部が接触し歯軸方向への負荷が可能である。このため歯列の形状が変化する要素が少ない。これに対し下顎に装置を設計する場合には付与される誘導面は遠心傾斜面distal lower、DLである。審美性にはやや優れるが、誘導面は短いもので、就寝時に使用する装置としては使用できないことがある。上顎前歯に装置の提供する中心咬合位におけるセントリック・ストップを付与することが難しい。時に前歯の扇状離開や挺出を生じることがある。
前方整位型装置と同じ目的のものに整形的下顎位変更装置MORA mandibular orthopedic repositioning applianceがある。これは、下顎臼歯部のみを被覆する特殊な装置で下顎位を暫間的に変更するために使用される。長期の装置は禁忌であるが、これは臼歯部のみの部分的な被覆では前歯部の挺出を招くからである。
前方整位型装置の除圧効果は、治療初期においては全日(歯の清掃時を除く1日24時間)の装着がなされたときに最大である。しかしながら、就寝時に復位不能円板転位を間歇的に生じる症例に、これを防止する目的で夜間のみ本装置を装着する方法は、全日装着によって生じることのある咬合問題発現の可能性が低く有効性がある。
前方整位型装置の調整は、まず第1に咬合関係の安定を得るように留意すべきで疼痛と機能障害を軽減するうえで最小の前方移動量(2mmかそれ以下)とすべきである。前方整位型スプリントではクリック消失の下顎位が既存の咬頭嵌合位よりも3mm以上前方である場合には適応症とはされない。これは、本装置が紹介された70年代の考え方よりもはるかに消極的なものとなっている。関節痛と機能障害(間歇的に生じる復位不能円板転位)が改善されたならば、治療前の咬頭嵌合位を目標に後方整位を行なう。これは装置をスタビライゼイション装置に変更するか、あるいは前方整位型スプリントの誘導斜面を調整することにより達成される。装置は後方のより生理的な位置に調節してもどさなくてはならないがこれは6~12週のうちに行なわれるべきであるというのが近年の考え方である。不必要な修復処置、補綴処置、および矯正治療を避ける意味でこの段階における後方整位の重要性が強調される。
前方整位型装置による治療成績は短期では良好であるが、長期の使用は推奨されない。長期にわたる前方整位型装置の使用は医原性の咬合問題(臼歯部のオープンバイト)を惹起する可能性があるので前方整位型装置はクリックの消失する下顎位の存在する患者のうちの限られた者のみに応用される。関節痛の症例のうち、咬合問題の処置の可能性に関して十分な理解が得られた患者のみに試みるべきである。先に述べたように下顎の整位によって咬合関係に非可逆的な変化(臼歯部のオープンバイト)を招来することがある。本装置の使用に際しては、患者に対して術後に必要となるかもしれない咬合処置についての十分な説明を術前に行なってあらかじめ患者の理解と納得を得ておく必要がある。
製作法と材料はスタビライゼイション装置に準じるが、咬合採得はクリッキングの消失する顎位で行ない、夜間装着する装置の誘導面は最後退位においても下顎を誘導できるだけの長さが必要で、通常は咬合器上でやや大きめに製作して、装着時に必要な大きさに縮めることで達成する。