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ワックスバイト

【読み】
わっくすばいと
【英語】
Wax bite
【辞典・辞典種類】
新編咬合学事典
【詳細】
→セントリック・バイト 
中心位における上下顎の位置関係の記録、わずかに開口させ上下顎歯が接触しない状態で採得される。咬合異常のある場合は中心位へ下顎を誘導するのが難しいため、Lucia(1961)のアンテリア・ジグやリーフ・ゲージを併用する。これにより上下顎の歯列が離開し、神経筋機構がブロックされた状態で咬合採得を行なうことができるから、下顎を比較的容易に中心位へ誘導することができる。
セントリック・バイトの素材には種々あるが、アルー・ワックスやパラフィン・ワックスを用いることが多い。ワックス単独では変形するおそれがあるので、後方中央部にソフト・メタルを裏装して補強する方法も紹介されている。アルー・ワックスの場合は1枚、パラフィン・ワックスの場合は2枚を、上顎歯列弓よりも約2mm大きめに切って製作する。アンテリア・ジグを用いるときは、硬めのパラフィン・ワックスを1枚使い、犬歯より前方は切り落としてアンテリア・ジグと接触しないようにしておく。
ワックスバイトを患者の上顎歯列に圧接し固定したら、下顎を中心位へ導きゆっくりと閉口させ、ワックス面に咬頭頂の圧痕をつける。ワックス単独では精度が劣ると考える場合は、圧痕部に一層インプレッション・ペーストを塗布し、咬合関係を精密に採得をする方法もある。開口位で採得するため、咬合器へのトランスファ操作中に誤差を生じないように、後方基準点はターミナル・ヒンジアキシスの実測値を用いる必要がある。しかも開口量は歯列の接触しない範囲で最少であることが望ましい。セントリック・バイトの精度を確認する方法としてLauritzen(1974)のスプリット・キャスト・テクニックがあり、有効である。
→マッシュバイト 
流動性の高い材料を使用して咬頭嵌合位における上下顎関係を記録する方法。GPT-6では、軟化材(ビーズワックスなど)を用いて採得される上下顎関係の記録(レコード)、と定義されている。咬合面間記録ともいう。上下顎歯がしっかりと嵌合した状態を採得するのに適し、咬頭嵌合位の記録に用いられる。マッシュバイト法は上下顎歯の接触関係のみを再現し、顆頭の位置を記録することはできない。マッシュバイトを使って下顎模型を固着するときは、普通後方基準点は目測法で求める。そのため咬合器の開閉路は生体と異なったものになるが、上下顎歯が接触する位置は正確に再現されるので、咬頭嵌合位を基準とする日常の小規模な補綴では、この誤差はとくに問題にならない(Guichet 1970)。また前もって咬合調整を行ない中心位と咬頭嵌合位を一致させてある場合は、この方法でも中心位を再現できる。
バイトの材料は流動性の高いものであれば何でもよいが、あつかいやすさと精度の点でインプレッション・ペーストがもっとも適している。ワックスのように抵抗のある材料は上下顎の歯を嵌合させるときに、ある程度の咬合力を必要とし、下顎を偏位させる危険があるので、この方法には向かない。シリコーン印象材は下顎の模型を噛み合わせるときにどうしても浮きやすいのであつかいにくい。練和したインプレッション・ペーストを下顎臼歯部咬合面上に左右等量のせ、咬頭嵌合位で閉口させて両側を同時に記録する。片側だけに材料をおくと、患者は材料のおかれている側に下顎を偏位させるので注意を要する。インプレッション・ペーストはもろく、口腔外に取り出すときや歯列模型へ適合するときに破折しやすいので、その取りあつかいには十分注意する必要がある。
→咬合面間記録