後戻り(再発)の防止方法
- 【読み】
- あともどり(さいはつ)のぼうしほうほう
- 【英語】
- prevention of relapse
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科矯正学事典
- 【詳細】
- 後戻り(再発)の防止方法として,長期保定,早期治療,機能的問題の解決(不良習癖の除去),顎骨の成長抑制,外科的処置,オーバーコレクション,永久固定,ストリッピング,リシュイピング,さらに,必要に応じてセプトトミーなどがあげられる.一番基本的な防止法は保定装置の適切な使用は90%以上患者の自己責任の範囲であることを患者に告知し,患者に指示通り保定装置を使用させることである.
1)長期保定:捻転,転位などの個々の歯の位置異常があったり,動的処置が非常に困難であったりした場合,長期保定が必要である.
2)早期治療:顎の成長発育を利用したり,機能的な問題があったりする場合,早期治療を行う.とくに捻転歯では歯根未完成のうちに治療を行うことが奨められている.
3)不良習癖の除去:弄唇癖,弄舌癖などの不良習癖は保定装置除去前に完全に排除するべきである.
4)顎骨の成長抑制:顎発育によって満足すべき保定が行えなかったり,自然保定が得られたかのようにみえてもその後に起こる顎発育によって再発が起こったりして,再び不正咬合になることがある.顎の発育は直線的に変化するものではなく,発育の波があるばかりか,個人差も大きいので継続的な観察が必要である.
5)外科的処置:矯正治療のみによって不正咬合を十分に改善できない場合には,矯正の動的治療とともに外科的処置を併用して不正咬合を改善させる方法がある.たとえば下顎前突の顎切除などである.
6)オーバーコレクション(行き過ぎ矯正):過蓋咬合,開咬では正常被蓋以上にオーバーバイトを減少あるいは増加させ,オーバーコレクションさせておくことが必要である.
7)永久固定:動的処置後,長期の保定を行っても後戻りの傾向が存在すると考えられる場合,永久的に補綴的処置(永久保定)を行う.
8)ストリッピング,リシェイピング(stripping, reshaping):後戻りは咬合が歯牙素材の組み合わせによりできあがっているので,歯牙素材そのものの形態が原因となることがある.したがって分厚すぎる切歯の辺縁隆線をポイントで削除したり,隣接面のエナメル質をメタルストリップス,MD-reducer,tooth separatorで削除し,平坦な面にしたりして,後戻りを防止する.
9)セプトトミー(septotomy):セプトトミーとは歯頸部の周囲線維(環状靭帯)切断のことをいう.捻転歯などの動的処置後,器械的保定装置のみでは安定した自然保定が得られないと判断した場合,セプトトミーにより安定した結果が得られるといわれていたが,現在では歯周疾患の誘因となるという問題からあまり行われていない.