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エッチング法

【読み】
えっちんぐほう
【英語】
etching method
【辞典・辞典種類】
歯科矯正学事典
【詳細】
 歯質とレジンとの接着力を高める目的で行う歯面の前処理法である.接着は機械的結合または化学的結合によって引き起こされるが,エッチング法は機械的結合(投錨効果,嵌合効果)を利用したものである.通常,歯科矯正領域においてエッチング法はエナメル質に対する酸エッチングをいう.エッチング法の研究は,ブオーノコア(Buonocore,1955年)が85wt%のリン酸でエナメル質を処理し即硬性アクリルレジンをエナメル質に接着できるようにしたことに始まる.従来リン酸の種類,濃度,エッチング時間などの研究により,35~40%の正リン酸の60秒間処理が臨床的には最適とされている.主にリン酸の接着に及ぼす研究としてボーウェン(Bowen,1973年)やエッチングパターンの3型を示したシルバーストーン(Silverstone,1975年)によって,歯科臨床の各分野に導入されるようになってきた.なお,リン酸より脱灰量の少ないエッチング剤としてクエン酸をはじめとする各種有機酸やEDTAなどの研究も行われたが現在使用されていない.酸エッチング法における酸処理後のエナメル質表面は凹凸状を呈し,エナメル質表面のぬれを高め,この凹凸にレジンが侵入する投錨効果によって保持力を高める.なおC酸エッチング法により,耐酸性の強い最表層エナメル質を喪失するので,矯正治療期間中,後のエナメル質の歯質強化が問題となる.また,近年各種レーザー装置を利用したレーザーエッチング法の研究も盛んに進められている.レーザーエッチングは,酸エッチングと比較すると操作が簡便であるという利点はあるが,耐酸性の強い最表層エナメル質の喪失などのエッチング法における欠点は解消されず,前処理での墨によって歯質の着色残存あるいはレーザー装置による照射時の音の大きさ,生じる熱に対する対策,レーザー照射エネルギーも研究者によってさまざまな見解があり将来有望であるが未だ研究段階である.
【酸エッチング法の手順】(1)エナメル質表面を研磨,水洗,乾燥する.(2)エナメル質表面へ液状あるいはゲル状の正リン酸を塗布する.(3)60秒経過後に約30秒の水洗および乾燥する.
【レーザーエッチング法の手順】(1)エナメル質表面を研磨,水洗,乾燥する.(2)乾燥したエナメル質表面へ墨を塗布する.(3)レーザー照射装置(Nd-YAGレーザー,アルゴンレーザーなど)を用い中等度の照射エネルギーで処理する.