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MTM

【読み】
えむてぃーえむ
【英語】
minor tooth movement
【辞典・辞典種類】
歯科矯正学事典
【詳細】
(同)局所的歯牙移動,局所的矯正治療
 歯の小移動,局所的歯牙移動,局所的矯正治療などとよばれている.同義的に用いられる限局矯正治療(limited tooth movement)とは本質的に区別されていたが,米国矯正歯科学会が最近になって,limited orthodontic treatmentと記載し,いわゆるMTMもこれに含まれることになった(AAO., The Bulletin Vol.14 No.1,1996).MTMは本格矯正治療(corrective orthodontics=major tooth movement)に対する言葉で,1歯から数歯を対象に,わずかな距離を移動して空隙を作製または閉鎖することによって,歯の近遠心的あるいは唇舌的な傾斜,挺出,捻転を改善する方法である.
1.MTMと本格矯正治療との比較
1)不正咬合の種類についての比較:本格矯正治療は歯槽型および骨格型の不正咬合が対象であるのに対し,MTMは歯槽型の不正咬合に対してのみ行われる.
2)移動の形式についての比較:本格矯正治療は傾斜移動,歯体移動,圧下,および歯列弓の移動を行うのに対して,MTMでは主に歯の傾斜移動を利用する.
3)使用する装置による比較:本格的矯正治療ではベッグ法,エッジワイズ法などの固定式矯正装置を用いる.MTMでは本格矯正治療で用いた固定式矯正装置を局所応用する.まれに可撤式矯正装置を用いたりする.
4)期間による比較:MTMの治療期間は本格的矯正治療に比べてかなり短縮され,一般的に6ヵ月くらいであるといわれている.
5)歯科医師の技術の程度による比較:本格矯正治療を行う場合には正式な訓練と臨床指導を受けていることが必要である.MTMを行う際にも多少の特別な訓練を受けている必要がある.ただし,局所的に治療を終了させることができなかった場合を想定して本格矯正治療を行える技量をもつべきである.
2.MTMの治療目標
本格的矯正治療によって求められる治療目標は理想的咬合状態への改善であり,かなり高度で精密な矯正治療技術を要求される.MTMによる治療目標は主として歯の小移動によってある程度の咬合の改善をはかることにある.どちらも目標とするところは歯および歯列をとりまく環境の改善と,整備による歯および歯列の安定化である.
3.MTMの基本的な歯の移動様式(Module)
MTMは次の歯の移動様式の組み合わせで行われることが多い.すなわち,それぞれのModuleを習得することにより自動的に効率よいMTMが行えることになる.
Module1:離開空隙の閉鎖法
Module2:空隙を作る方法
Module3:叢生を改善する方法
Module4:前歯の前傾症例の改善法
Module5:捻転歯の改善法
Module6:臼歯部歯軸の近心傾斜の整直法
Module7:牽引誘導法
4.MTMの治療手順
1st step:歯の垂直的ならびに水平的なレベリングを行う段階
2nd step:レベリングされた状態をより太いワイヤーで確実に保持し空隙の閉鎖を行う段階
3rd step:付加物を用いての歯軸の整直を行う段階
5.MTMの注意事項
1)後方歯群の近心移動を行わない.
2)抜歯空隙の閉鎖は原則的に行わない.
3)ただし叢生,捻転の除去により空隙が消費される場合は例外である.
4)前歯の圧下による咬合挙上を行わない.
5)矯正治療後の咬合調整を十分に行う.
6)治療期間は6~7ヵ月になるようにする.