顎運動の検査
- 【読み】
- がくうんどうのけんさ
- 【英語】
- functional analysis of mandibular movement
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科矯正学事典
- 【詳細】
- 顎運動の検査は機能的検査のうちの一項目であり,その目的は下顎の変位や機能的不正咬合などの有無を検査することである.一般に顎運動の検査には次の項目がある.
1)下顎位:(1)中心位,(2)中心咬合位,(3)安静位,(4)最大開口位
2)運動路:(1)限界運動路,(2)咀嚼運動路,(3)咬合閉鎖路
これらの記録方法には直接描記法と,電気的および光学的方法がある.
3)早期接触:下顎閉鎖路において下顎が変位を起こすような上顎と下顎の歯の接触関係が問題となる.検査方法としては咬合紙を用いる方法,ファンクショナルワックスバイト(functional wax bite)法などがある.
4)咬合音:上顎と下顎の歯が咬合したときに発生する0.01~0.3秒程度の接触音である.中心咬合位が安定した状態であると振幅が大きく持続時間が短い咬合音を呈し,中心咬合位が不安定で上顎と下顎の歯の間に滑走が生じているような場合には振幅が小さく持続時間が長い咬合音となる.この咬合音の波形は電気的方法により客観的に記録でき,波形の状態と筋活動とを関連づけた評価が可能である.
5)機能的分析法:早期接触や咬頭干渉がある場合,下顎はそれを避けるため反射的に異常な咬合位をとる.下顎安静位から中心咬合位に至る過程で,早期接触により下顎が大きく前後左右に偏位するものを機能的不正咬合といい,この機能的因子を分析する方法を機能的分析法という.頭部X線規格写真による方法とファンクショナルワックスバイト法が代表的である.
(1)頭部X線規格写真による機能分析法:トンプソン(Thompson)により発表された方法で,下顎安静位と中心咬合位において頭部X線規格写真の撮影を行い,得られた2枚のフィルムをトレースしてS-N平面で重ね合わせ,下顎安静位から中心咬合位に至るまでの下顎の咬合閉鎖路(path of closure)における下顎の異常な運動を把えるものである.
(2)ファンクショナルワックスバイト法:これはモイヤース(Moyers)により発表された方法である.軟化した蝋堤を咬ませることにより早期接触部位からの求心性刺激を遮断し,個体の咀嚼筋の平衡位で得られる理想的咬合位(ideal occlusal posi-tion)を把えようとする方法である.理想的咬合位と習慣性咬合位が一致していればその個体は機能的正常咬合を有しているということになり,一致していなければ機能的な異常が存在するということになる.