咬合調整
- 【読み】
- こうごうちょうせい
- 【英語】
- occlusal adjustment
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科矯正学事典
- 【詳細】
- 早期接触や咬頭干渉を取り除き,咬頭嵌合位や偏心運動時の咬合力の方向づけと過剰な咬合力の調整をすることを目的とした処置.一般には,歯を削合することによる方法を示すが,広義には矯正治療のダイレクトボンディング法によるレベリングを行う方法も含まれる.
【適応症】
1)外傷性咬合が存在するとき.
2)歯ぎしり,くいしばりなどの習癖が存在するとき.
3)動揺が増大しているとき.
4)早期接触や急な咬頭斜面が存在するとき.
5)矯正治療完了後または保定終了後に咬頭干渉や接触異常が生じたとき.
6)捻転歯や挺出歯など位置異常のある場合.
【調整法】
1)咬頭嵌合位における調整法:咬頭嵌合位における基本的な削合調整法はジャンケルソン(Jankelson)の方法が代表的である.ジャンケルソンは早期接触を以下の3つに分類し削合法を決定している.
1級:上顎臼歯の頬側咬頭舌側斜面と下顎臼歯の頬側咬頭頬側斜面での早期接触.なお前歯部では下顎前歯唇側斜面と上顎前歯舌側斜面での早期接触.
2級:上顎舌側咬頭舌側斜面と下顎舌側咬頭頬側斜面での早期接触.
3級:上顎舌側咬頭頬側斜面と下顎頬側咬頭舌側斜面での早期接触.
これらの早期接触は上下の歯が接触する度に側方圧を受けることになる.ジャンケルソンの調整法の基本的な考え方は歯に加わる側方圧を減らして垂直圧が加わるようにすることである.したがって,削合の部位は1級の場合は臼歯では下顎頬側咬頭頬側面,前歯では下顎前歯唇側面,2級の場合は上顎舌側咬頭舌側斜面,3級の場合は下顎頬側咬頭舌側斜面あるいは上顎舌側咬頭頬側斜面である.このほかに矯正治療における咬合調整はたとえば上顎前歯の分厚い辺縁隆線を削合することで下顎前歯の叢生の発生を防止をしたり,乳歯列や混合歯列に生じやすい早期接触による交叉咬合や反対咬合の改善がある.乳歯列や混合歯列の早期接触を診査する方法としてファンクショナルワックスバイト法があり,これにより早期接触部位を断定し,削合することで理想的な咬合位を与えるものである.混合歯列の削合は乳歯を対象として行うべきであり,永久歯になんらかの咬頭干渉がある場合は矯正装置によりその歯を移動して改善する.なぜなら,永久歯の最終的な位置は永久歯咬合ができあがるまで何回も変化するためである.
2)後方接触位における調整法:まず下顎を安静位にとらせ,術者によりオトガイ部を軽く下顎を後方へ押しながらカチカチと数回かませたときの上下顎の接触した位置が後方接触位である.この位置における早期接触部を削合し左右のバランスをとる.
3)中心滑走における調整法:中心滑走中に咬頭干渉があると咬合性外傷やブラキシズム,顎関節症の原因になりやすい.咬頭干渉の有無は後方接触位から咬頭嵌合位へ滑走するときに下顎の正中線が左右側にずれることで判断することができる.早期接触部の削合の原則は上顎臼歯では各咬頭の近心斜面,下顎臼歯ではその遠心斜面を削合する.
4)側方運動における調整法:側方運動時における早期接触点の削合は作業側においてはBullの法則に従う.すなわち上顎歯は頬側咬頭,下顎歯は舌側咬頭を削合するのが原則である.平衡側においてはセントリックストップをできるだけ残すようにして咬頭干渉部を削合する.