構成咬合
- 【読み】
- こうせいこうごう
- 【英語】
- construction bite, working bite
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科矯正学事典
- 【詳細】
- 下顎運動に関するすべての筋や口腔周囲筋の機
能力を介して利用できるように下顎の位置を変えた上下顎間の特殊な咬合関係をいう.アンドレーゼン(Andresen)とホイップル(Haupl)の提唱した構成咬合とは上下的に臼歯部の顎間距離を2~4mmとし,前後的には下顎の移動量を上顎前突ではほぼ上下顎の近遠心関係が正常となるまで,反対咬合では下顎をできるだけ後方位に位置づけ,左右的には上下顎正中部を一致させるというものである.近年,アクチバトールの改良装置も発表され,構成咬合についても多くの意見の相違があるが,構成咬合の設定には下顎の垂直的,前後的,側方的な位置づけを十分考慮する必要がある.
【構成咬合の実際】
1.上顎前突症例で下顎を著しく前方に位置づけ咬合高径を低くする咬合採得
1)適応症:大きなオーバージェットを有するアングルII級1類のケースでII級関係が下顎の過閉咬に起因して結果的に下顎の機能的後退が生じている場合や,同様のII級症例で下顎の成長不足の結果,下顎が後方に位置した症例.
2)方法:このように機能的な下顎後退を示すようなアングルII級症例では,正常な閉口路をもつ真性II級不正咬合に比べて大きく下顎前方位をとらすことができる症例が多い.したがって,構成咬合位は下顎をできるだけ最前方位に突出させた位置から少なくとも3mm後方に下顎を位置づけ,垂直的には下顎の安静空隙の範囲にとどめる.
3)作用機序:装置に適合して下顎が近心に移動することにより閉口筋が活性化される.歯が装置にうまく適合すると筋伸張反射により筋活動が活性化される.さらに咬合,嚥下といった機能により筋紡錘の反射性活動を刺激され筋反射性筋活動も加わり機能矯正力となる.
2.下顎をわずかな前方位におき咬合高径を高くするような咬合採得
1)適応症:下顎の垂直的な成長のパターンを示すような症例,ただし顎骨成長が垂直的傾向を示すアングルII級1類症例は二態咬合に陥りやすい.
2)方法:この方法による構成咬合は,習慣的咬合位より前方3~5mmに位置づけ,垂直的には安静空隙の大きさに応じて高さ4~6mm挙上し安静空隙を最大限4mm以上越えない範囲で採得する.
3)作用機序:咀嚼筋の伸張反射を誘発し筋活動を活性化するとともに,軟組織を伸張することにより生じる軟組織の粘弾性反応を利用し機能的矯正力を発揮する.
3.下顎の前方位をとらない咬合採得
1)垂直的に問題のある場合
(1)適応症:過蓋咬合,開咬
(2)方法および作用機序
(1)歯槽性過蓋咬合:大臼歯の低位を伴う過蓋咬合で大きな安静空隙を有する場合,安静空隙の大きさに応じて標準または大きめとする.切歯の高位に起因する過蓋咬合は安静空隙が小さく,構成咬合は低くおさえる.
(2)骨格性過蓋咬合:構成咬合は安静位より高くし,具体的にほ安静空隙を2~6mm越えて開口することにより,筋や軟組織が伸張したときの粘弾特性と大臼歯部の自然萌出を促す.
(3)開咬:上下顎の矢状面方向での関係が正常である場合は下顎を前方位におく必要はなく,歯槽性の開咬症例では咬合を4~5mm程度挙上して早期接触のある大臼歯に圧下力が加わるようにする.ただし,上下顎の基底部がともに前方に向かって開いた状態の症例は,機能的矯正治療は禁忌である.
2)歯列弓長不足を示す場合
(1)適応症:混合歯列期の多少の叢生を含む拡大の必要な症例で,拡大床単味では固定の得られない場合.
(2)方法および作用機序:咬合採得ほ,下顎の位置づけや,特定歯の萌出,成長誘導の必要性がないために構成咬合の高さは低くてよい.つまり,上下顎間にわたる固定歯によって維持された装置で有効な拡大が起きる.
4.III級症例で,咬合挙上と下顎の後方への位置づけを行うための咬合採得
1)適応症:歯の誘導により機能的に下顎が前突するアングルIII級の不正咬合.つまり,下顎を後方に誘導した際切端咬合位のとれる症例.骨格性下顎前突は機能的矯正装置のみで治療は困難である.
2)方法:機能的III級症例の場合は,切歯による誘導を排除するのに十分なだけ咬合を挙上して採得する.つまり,具体的に示すと次のようになる.下顎を後方位に誘導し上下顎の切端間距離を約2~3mmとし正中を一致させた後方臼歯部で5~7mmの空隙を得るように採得する.
3)作用機序:下顎の後退位への保持と上顎歯の唇側への誘導により,前突している下顎に対する上顎の適応変化が起こり,バランスのとれた上下顎関係が得られる.
→機能的顎矯正法(機能的矯正法),機能的顎矯正装置(機能的矯正装置)