歯科矯正学
- 【読み】
- しかきょうせいがく
- 【英語】
- orthodontics
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科矯正学事典
- 【詳細】
- 歯科学全体が科学的な基盤をもって保存修復学,床義歯学,歯周病学というように分化するに伴って,矯正治療も歯科治療の一分野として定義されるようになった.歯科矯正学の定義および意義も時代とともに変わってきている.1907年に近代歯科矯正学の先駆者であるアングル(Angle)は“歯科矯正学とは,歯の不正咬合の矯正を目的とする科学である”と定義した.その後1911年にアングルの弟子であるノイエス(Noyes)は“歯と顔面の発育との関係および阻害され軌道を外れた発育の修正を研究し治療するための学問”であるとした.1922年には英国矯正歯科医協会(British Society of Orthodontist)は[歯科矯正学とは“歯の位置に悪影響を与える全身的な成長発育とくに顎・顔面部の成長発育に関する研究すなわち,発育に影響を及ぼす内因と外因の働きとそれに対する反応に関して研究するとともに,発育が阻害されたり発育がゆがめられないように予防や修正の方法を研究する学問”である]と定義し,“予防”という考え方が加えられたのである.
また,マッコイ(Mccoy)は,歯および口腔の異常の予防と修正を目的とする科学であるとした.1960年に高橋新次郎は,[歯科矯正学とは“歯・歯周組織・顎骨およびこれらに付随する諸構造(口腔周囲筋を含む)の正常な成長発育を研究すると同時に,これら諸構造の不正な発育によって生じた咬合の不正,顎骨の異常形態および顔貌の不正などの改善を行うことを研究し,さらにこれらの不正状態の発生を予防することもあわせて研究する歯科医学の一分科”である]と定義した.さらに1979年,榎恵は従来の数多くの定義を集約し,[歯科矯正学とは“歯・歯周組織・顎と,さらにそれらを包含する顔の正常な成長発育を研究し,それら諸構造の不正な成長発育から引き起こされる不正咬合や顎の異常な関係を改善して口顎系の正しい機能を営ましめ,同時に顔貌の改善をはかって,社会的・心理的に個人の福祉に寄与し,進んでは不正状態の発生を予防するための研究と技術と,を含む歯科の一分科”である]と定義している.現在ではこの榎恵の[歯科矯正学の定義]が一般的に引用されている.