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ジャラバック法(頭部X線規格側貌写真の)

【読み】
じゃらばっくほう(とうぶえっくすせんきかくそくぼうしゃしんの)
【英語】
Jarabak analysis
【辞典・辞典種類】
歯科矯正学事典
【詳細】
 頭部X線規格側貌写真の分析法の1つである.ビヨルク法をもとにジャラバックが修正を加えた分析法で,スタイナ一法,ツイード法,リケッツ法の分析項目を応用している.ジャラバック法は矯正治療終了後5年を経過した200症例をもとに算出した平均値を使用している.また,体型を3種類に分類し,それぞれの体型と顔,成長,不正咬合の関係を明らかにしている.ジャラバック法の分析項目および平均値は次の通りである.
1)骨格型
(1)サドルアングル:セラ(S)とアーティキュラーレ(Ar)を結ぶ後頭蓋底とS-N平面がなす角度である.骨格性下顎前突症例にはこのサドルアングルが小さい症例が多いとされている.平均値は123±5°である.
(2)関節角:下顎後縁平面と,セラ(S)とアーティキュラーレ(Ar)を結ぶ後頭蓋底がなす角度である.矯正治療によって下顎がクロックワイズローテーション(時計回りに回転)すると大きくなり,カウンタークロックワイズローテーション(反時計回りに回転)すると小さくなる.平均値は143±6°である.
(3)ゴニアルアングル:下顎下縁平面と下顎枝後縁平面がなす角度である.ゴニアルアングルは下顎枝の高さと下顎の長さによって影響を受けるためアッパーゴニアルアングルとロウワーゴニアルアングルとに分けて評価する.平均値は130±7°である.
(4)スリーアングル:サドルアングル,関節角,ゴニアルアングルの総和をいい,平均値は396±6°である.スリーアングルは成長のパターンを把握するのに用いられる.369°以上の場合を時計回りの成長パターンといい,369°以下の場合を反時計回りの成長パターンという.
(5)前頭蓋底の長さ:セラ(S)とナジオン(N)間の距離をいう.平均値は71±3mmである.
(6)後頭蓋底の長さ:セラ(S)とアーティキュラーレ(Ar)間の距離をいう.著しい骨格性下顎前突や開咬を伴う骨格性下顎前突では後頭蓋底の長さが短い傾向がみられる.平均値は32±3mmである.
(7)アッパーゴニアルアングルおよびロウワーゴニアルアングル:ナジオン(N)とゴニオン(Go)を結ぶ直線と下顎枝後縁平面がなす角度をアッパーゴニアルアングルといい下顎枝の傾斜を表し,ナジオン(N)とゴニオン(Go)を結ぶ直線と下顎下縁平面がなす角度をロウワーゴニアルアングルといい下顎骨体の傾斜を表す.アッパーゴニアルアングルは52~55°,ロウワーゴニアルアングルは70~75°の範囲が平均的である.アッパーゴニアルアングルが大きい場合は注意を要し,補償的にロウワーゴニアルアングルが小さくなる.このような場合は成長が終了するまで観察することが必要である.
(8)下顎枝の高さ:アーティキュラーレ(Ar)とゴニオン(Go)間の距離である.著しい骨格性下顎前突や開咬を伴う骨格性下顎前突では下顎枝の高さが小さい傾向がみられる.平均値は44±5mmである.
(9)下顎骨体長および前頭蓋と下顎骨体長の比率:下顎骨体長はゴニオン(Go)とメントン(Me)間の距離である.平均値は71±5mmである.前頭蓋と下顎骨体長の比率は約1:1となるのが理想的で,骨格性下顎前突では下顎骨体長のほうが長くなる.
(10)SNA:S-N平面とセラ(S)とA点(A)と結ぶ直線がなす角度である.平均値は82°である.ジャラバック法で用いるA点は上顎基底骨の最深部ではなく,上顎中切歯根尖から2mm唇側の点である.
(11)SNB:S-N平面とセラ(S)とB点(B)と結ぶ直線がなす角度である.平均値は80°である.
(12)ANB:セラ(S)とA点(A)と結ぶ直線とセラ(S)とB点(B)と結ぶ直線がなす角度である.上下顎歯槽基底部の相対的な前後関係を表す.平均値は2°である.
(13)下顎下縁平面傾斜角:ジャラバック法ではS-N平面に対する下顎下縁平面傾斜角を用いる.平均値は32°である.
(14)S-N平面とY軸のなす角度:頭蓋に対するオトガイの成長方向を評価する.
(15)前顔面高:ナジオン(N)とメントン(Me)間の距離である.
(16)後顔面高:セラ(S)とゴニオン(Go)間の距離である.
(17)顔面高比:前顔面高に対する後顔面高の比率である.62%以下を時計回りタイプといい,前顔面高の成長が後顔面高より著しく,顔面の下方への成長が著しいタイプである.65%以上は反時計回りタイプといい,後顔面高と顔面深径が前顔面より速い割合で下前方あるいは下後方へ成長するタイプである.62~65%はその中間型で,前後顔面高がバランス良く成長しているタイプである.
(18)顔面平面角:顔面平面とS-N平面のなす角度で,頭蓋に対するオトガイの前後的関係を表す.
(19)顔面突出角:ナジオン(N)とA点(A)を結ぶ直線とA点(A)とポゴニオン(Pog)を結ぶ直線がなす角度である.A点は上顎中切歯根尖部より2mm唇側の点を用いる.
(20)咬合平面と下顎下縁平面のなす角度:下顎骨の形態的特徴と咬合平面との関係を表す.
2)歯槽型
(1)上下顎切歯突出度:上顎切歯歯軸と下顎切歯歯軸のなす角度である.臨床的には重要な項目であり,正常咬合者では130~150°とかなり広範囲に分布するが,矯正治療後の予後が良い症例は128~133°の範囲内にあるとされる.平均値は131°である.
(2)下顎下縁平面傾斜角(下顎下縁平面に対する):下顎下縁平面と下顎中切歯歯軸のなす角度である.下顎中切歯の唇側傾斜,舌側傾斜の度合いを表す.平均値は90±3°であるが,頭蓋に対する下顎の付着状態が急傾斜を示すような場合は平均値より小さくなることが望ましい.
(3)下顎中切歯切縁と下顎下縁平面との距離:下顎下縁平面に対する下顎中切歯切縁の垂直距離である.舌の悪習癖などにより下顎切歯の萌出が阻害されているような場合に小さい値を示す.
(4)上顎切歯歯軸傾斜角(S-N平面に対する):S-N平面と上顎中切歯歯軸のなす角度である.上顎切歯歯軸の傾斜の度合いは口元の突出感に影響を与える.上顎切歯歯軸傾斜角が大きいと口元が突出し,口唇は短く翻転したように見え,上顎切歯歯軸傾斜角が小さいと上唇は長く平坦に見える.平均値は102±2°である.
(5)上顎中切歯切縁と顔面平面との距離:顔面平面に対する上顎中切歯切縁の垂直距離である.平均値は5±2mmである.
(6)下顎中切歯切縁と顔面平面との距離:顔面平面に対する下顎中切歯切縁の垂直距離である.平均的には-2~+2mmの範囲内にある.
3)審美性に関する項目
(1)顔面審美線(下唇):鼻尖とオトガイ部に対する接線をE-ライン(エステティックライン)といい,このE-ラインに対する下唇最突出部の垂直距離である.下唇最突出部がE-ラインより前方にある場合をプラス,後方にある場合をマイナスとする.E-ラインによる評価はチェアサイドでも応用が可能で,軟組織を評価する方法としてはきわめて有用である.平均的には0~2mm範囲内にある.
(2)顔面審美線(上唇):E-ラインに対する上唇最突出部の垂直距離である.上唇最突出部がE-ラインより前方にある場合をプラス,後方にある場合をマイナスとする.平均的には-1~-4mmの範囲内にある.さらにジャラバックが3種類に分類した体型と顔,成長,不正咬合の関係は以下の通りである.
i.内胚体格型:短大型体格者で消化器内臓が大きい体格である.大きな骨格性顔面構造を示し,成長期の顎の増加率は身長と同程度で大きくない.多くはアングルI級あるいはアングルIII級の不正咬合である.
ii.中間体格型:立方形体格者で筋肉,骨,結合組織の構造が優位にある体格である.下顎枝が広く角張っておりオトガイ部の発達が良好である.11~12歳ごろでは女性より男性のはうが成長率が高い.
iii.外胚体格型:細長体格者であり,脳が大きく体は虚弱である.顔貌は長さや幅が深さに優る.頭蓋基底後方で成長率が小さく下顎枝高が小さい.アングルII級1類を呈する場合が多いとされる.