専門情報検索 お試し版

小下顎症

【読み】
しょうかがくしょう
【英語】
micromandible
【辞典・辞典種類】
歯科矯正学事典
【詳細】
 小下顎症は下顎の発育不全を示す症状の総称である.一般に小下顎症には,下顎の大きさが絶対的に小さい場合のほか,頭蓋あるいは上顎骨に対する下顎の相対的な位置が異常に後退している場合もこの範疇に含まれることがあるが,これは下顎後退症と分類されるべきである.つまり真の小下顎症とは,下顎の大きさ自体が異常に小さいものを示す.これは成因によって先天性と後天性に分類される.
【成因】
1)先天性小下顎症:全身的な骨格系統の異常を伴う疾患に随伴して現れることが多い.すなわち,ピエールロバン症候群,顎顔面形成異常症,第一・第二鰓弓症候群などの一分症として,また無舌症,小舌症などに伴って生じる.高度の小顎症では新生児において呼吸困難や嚥下困難を伴う.側貌におけるオトガイ部の後退とオトガイ隆起の扁平な様相は年齢とともに著明となり,いわゆる鳥貌を呈するようになる.
2)後天性小顎症:出産時や乳幼児期に下顎に対して受けた外傷や,中耳炎,乳様突起炎あるいは顎関節炎などに続発する顎関節硬直症により生じた発育障害の結果である.
【症状】下顎骨骨体,下顎枝とともに幅,長さが小さく,両側性の場合は全体的な小下顎症となる.片顎性のものでは,患側の下顎が小さいためにオトガイ部は患側に偏位し,顔面は健側が扁平に,患側は膨らんでみえる.
【治療】下顎骨の増大をはかるため,いくつもの外科術式が発表されているが,その代表的な例として下顎枝矢状分割骨切り術があげられる.扁平なオトガイ部の形態を改善するためにはオトガイ形成術が施される.下顎前突者における下顎骨の大きさを減少させる場合と異なり,本症では骨の量がきわめて少ないため骨離断部での接触面積を十分に保ちながら下顎骨全体の増大をはかる必要がある.また,骨の移植を行った場合に起こりうる骨吸収の問題や,下顎骨の増大後の周囲の軟組織の伸張に伴う後戻りのため,予後は必ずしもよいとはいえない.単に側貌の改善のみならず,咬合関係の改善を十分得るためには口腔外科,矯正科をはじめとする各診療科の協力に基づいたチーム医療が必要である.