上顎後退(症)
- 【読み】
- じょうがくこうたい(しょう)
- 【英語】
- maxillary retrusion
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科矯正学事典
- 【詳細】
- 上顎後退症では下顎が近心咬合を呈し,顔面中1/3が後退しているので,相対性下顎前突症を呈する.多くは小上顎症である.
【原因】多くは先天性である.上顎後退症は遺伝性骨形成異常疾患である鎖骨頭蓋異骨症,下顎顔面異骨症,頭蓋顔面異骨症(Crouzon病),ダウン(Dowh)症候群などにみられることがある.唇顎口蓋裂患者は先天的な上顎骨の劣成長を伴っており,さらに口唇あるいは口蓋形成手術による外科的侵襲により上顎の発育とくに切歯骨の障害がみられる.
【症状】顔面中1/3が陥凹している相対性下顎前突症を呈する.咬合状態はアングルIII級の不正咬合あるいは開咬を伴っている場合が多く,咀嚼障害を訴える.
【治療】軽度のものは下顎前突の治療に準じて矯正治療が行われ,矯正歯科治療で困難な症例は外科的手術が適応される.咬合および顔貌の改善は,下顎骨を主体に行う手術,上顎骨を主体に行う手術さらには上下顎骨同時に行う手術によって治療が進められる.症例によっては,上顎骨の前方移動手術を行うよりも下顎骨の後方移動術が行われる.前方移動手術には,症例に応じたいわゆるLe FortI,II,III型の骨切り術が行われる.