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硝子様変性

【読み】
しょうしようへんせい
【英語】
hyaline degeneration
【辞典・辞典種類】
歯科矯正学事典
【詳細】
 硝子様変性は硝子質(ヒアリン)が組織内に出現することをいい,硝子質が無構造均質かつ透明な硝子様の光沢を有する蛋白性物質であることから蛋白質変性の1つとされている.硝子質は酸性の色素に親和性があることからへマトキシリン-エオジン(H-E)染色により赤染し,また外見上はアミロイドに近似するがいかなる蛋白性物質であるかは明らかにされておらず,その化学的な本質は不明とされている.硝子様変性は生理的環境下で認められないため,一般的には生体の病的な反応の1つとして認知されており,全身的には高血圧時の動脈壁,慢性炎症時の腺管基底膜,気管支喘息時の気管支基底膜など歯科領域では歯髄萎縮などに伴って多く認められる.歯科矯正においては,歯に強い矯正力を作用させると圧迫側に硝子様変性組織が生じる.硝子様変性に接する歯槽骨には破骨細胞が出現せず骨吸収が起こらないため,歯の動きは一時停止することとなる.これを臨床的に応用し,固定歯を意図的に強い力の作用下において硝子様変性を惹起せしめることによって不動とし歯根表面積に優る被移動歯の移動を図らんとする考え方がある.硝子様変性が臨床的に有効に応用されるものとして拡大ネジによる急速拡大,ベッグ法におけるメインアーチワイヤーに屈曲するアンカレッジベンド,エッジワイズ法のディスタルテイピングバンドなどが代表的である.拡大ネジによる急速拡大は歯を強い力の作用下において硝子様変性により不動とする一方,正中口蓋縫合部の離開を行おうとするものである.また,アンカレッジベンドはその角度によってワイヤーより固定大臼歯に加わる力が変化することから固定歯の歯槽骨における硝子様変性の発現を術者のコントロール下におくことをある程度可能とするものである.強い力は長期間にわたって持続的に作用させると歯根吸収などの不快事項の発生の誘因となる?め硝子様変性の応用はあくまで短期間であることが望ましい.その意味で急速拡大は長くとも約2週間という短期間で終了させ,アンカレッジベンドは変性組織の消失に伴う大臼歯の遠心傾斜が新たな固定効果を生み,持続的な強い力の負荷を必要としないことからいずれも理にかなったものといえる.