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歯列弓拡大弧線装置

【読み】
しれつきゅうかくだいこせんそうち
【英語】
expansion arch appliance
【辞典・辞典種類】
歯科矯正学事典
【詳細】
 1907年にアングル(Angle,E. H.)によって考案され,歯列弓を拡大することにより不正咬合の改善をはかることを目的とした唇側弧線装置の一種である.本装置は歯列弓の唇頬側に弧状の主線が位置し,主線の両側遊離端はスクリュー構造になっており,主線は固定歯の維持帯環の頬側に鑞着された頬面管内に挿入することにより維持される.主線と移動歯はワイヤーと結紮することにより矯正力の伝達が行われるが,単純な結紮のため歯の唇側および頬側の移動は傾斜移動となりやすい.さらに矯正力は主に太く強固な主線とスクリューによって発現するため,断続的な比較的大きな力となる.この作用様式から歯の動きが制約されることになり,その後釘管装置や紐状弧線装置が考案されたため,ほとんど使用されなくなった.しかし,本装置はエッジワイズ装置の原型として歴史的意義をもっている.
1)基本構造
(1)主線(拡大弧線):両側の遊離端にスクリュー構造をもつ(0.8~1.0mm線).
(2)維持帯環:固定歯に装着され,その頬面に頬面管が鑞着される.この頬面管は,拡大弧線の両端のネジと適合し,主線を維持するとともに,ネジによって弧線を前方に拡大する.
(3)結紮線:ゴム,フロスシルク,真鑞線が用いられ,拡大弧線と結紮して個々の歯の移動を行う.
2)作用機序
(1)前方拡大:拡大弧線のネジの調整
(2)側方拡大:拡大弧線の屈曲の程度とネジの調節
(3)個々の歯の唇頬側移動:拡大弧線との結紮
(4)個々の歯の近遠心移動:補助弾線
→歯列弓拡大弧線装置