スピーの彎曲
- 【読み】
- すぴーのわんきょく
- 【英語】
- curve of Spee
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科矯正学事典
- 【詳細】
- スピー(Spee, 1890)は頭蓋骨における天然歯列の排列状態を側方から観察し,下顎の小臼歯および大臼歯の頬側咬頭頂を連ねる線はある中心をもつ円弧を示すことと,さらにその円弧は下顎頭の前方を通過し円弧の中心は両眼窩を二等分する面上で,後涙嚢稜の後方に存在すると報告した.これがスピーの彎曲として知られているものであるが,米国補綴歯科学会の「Glossary of Prosthodontic Terms」の定義はスピーの彎曲は下顎犬歯尖頭から始まり,小臼歯と大臼歯の頬側咬頭を連ねた解剖学的彎曲としている.ストラング(Strang)によるとスピーの彎曲の存在は咀嚼時に適当な機能を与えるものであり,その働きは以下の通りである.
1)前歯部におけるオーバーバイトの正しい量を決定する.
2)側方歯群が咬合した際,前歯部のオーバーバイトを設定し,切歯に対し切断力を自動的に与える.
3)咀嚼時には上下顎咬合面の均一または平行な関係を生ずる.
4)下顎がわずか前方に移動したとき,均一な咬合面接触の維持を可能にする.
5)歯の軸傾斜の維持と確立を助け,歯列の近心接触作用として働き,これを一定に維持する.
ジャラバック(Jarabak)はスピーの彎曲の主要な目的として下顎の機能的運動時のあらゆる局面で,歯の機能的咬合平衡を供給することである.すなわちスピーの彎曲は正常咬合で浅く,オーバーバイト,オーバージェットが増加するに従って強くなるといっている.矯正歯科では,初期の段階でスピーの彎曲を平坦にし(レベリング),咬合を改善する必要がある.マルチブラケット装置によってこの彎曲を平坦にすることができるが,この際側貌という面から下顎切歯がA‐P lineの前方位置にしすぎないようにすることが大切である.レベリングによる下顎切歯の前方移動量の判定基準をバルドリッジ(Baldridge, D.W.1969)が1つの公式として発表した.
下顎切歯の前方移動量(mm)=0.488D-0.51
ただし,Dは下顎切歯切端と第二大臼歯間を結んだ咬合平面から最も深い咬頭頂までの距離(左右合計mm)である.
→スピーの彎曲と正常咬合,リバースカーブオプスピー,レベリングによる下顎切歯前傾量