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チンキャップ

【読み】
ちんきゃっぷ
【英語】
chin cap
【辞典・辞典種類】
歯科矯正学事典
【詳細】
(同)オトガイ帽装置
 オトガイ帽装置は顎外固定装置の一種で,下顎前突の治療に用いられる.本装置はセリエル(Cellier,1802)に始まり,セヴィル(Sewill,1870),トーマス(Tomas,1873),アングル(Angle,1895)らが改良し応用したといわれている.オトガイ帽装置はオトガイ部にチンキャップを,頭部にヘッドキャップを固定源として両者をゴムで連結させたもので,装置の調節が容易であり装置も簡単である.オトガイ帽装置の適応症は骨格性下顎前突(とくに成長発育途上にある場合),前歯部の反対咬合,外科矯正や本格矯正終了後の保定などである.牽引力を下顎頭の方向へ行うことにより,次の効果が期待できる.
1)下顎骨の成長のコントロールを行うことができる.
2)下顎骨の後下方への回転を伴った後方移動や下顎前歯の舌側移動などの形態変化が起こる.
3)牽引方向を変えることによって下顎骨を前上方に回転させ,臼歯部を圧下することができる.
4)スライディングプレートやポステリオバイトブロックなどの装置との併用により治療効果を高めることができる.
5)反対咬合の動的治療終了後に下顎骨の過剰発育による再発を防止する目的や外科的矯正治療終了後の保定の目的にも用いられる.
牽引力はゴムによって得られ,通常400~500gである.また,就寝時に1日8時間使用する.
オトガイ帽装置による下顎骨の変化については,(1)骨変化が起こるのは顎関節,下顎頭,オトガイ部であるという意見,(2)下顎枝部後縁から下顎体部下縁にいたる下顎角の狭小化が起こるという意見,(3)下顎骨の後下方への回転のみが起こるという意見,(4)骨の形態変化と後下方への回転の両者が生じているという意見などがあり,個体差や牽引方向,牽引の強さなどによりオトガイ帽装置の下顎骨の影響は様々のようである.
【製作順序】
製品により多少異なってくるが基本的な製作方法は以下の通りである.
1)ヘッドキャップの製作
(1)最大頭周に合わせたベルトを作る(ベルトA).
(2)片側の耳の前方部から反対側の耳の後縁に向かって上下に走らせたベルトを作り(ベルトB,B’),ベルトAと交差したところでホチキスで止める.
(3)ベルトB,B’の下端と直行に交差させ後頭部の下部を通って反対側のベルトB,B’の下端と交差させるベルトを調製する(ベルトC).ベルトCとベルトB,B’の交差したところをホチキスで止める.
(4)前額部の中央からベルトAと直行するように後方へ延長しベルトCと交差するベルトを作る(ベルトD).ベルトDとベルトA,ベルトCの交差するところをホチキスで止める.
(5)ベルトB,B’とベルトCにフックを取り付ける.
2)チンキャップ(チンカップ)の製作:金属製,プラスチック製の既製品を使用する場合,試適して必要であればバーなどで大きさを調製する.また,オトガイ部の印象を採ってレジンで製作する場合もある.
3)ヘッドキャップとチンキャップをゴムで連結する.最近はベルト型のヘッドキャップは製作に手間がかかることと,髪形が崩れるとの理由でネット型のヘッドキャップが多く用いられている.