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ノースウエスタン法

【読み】
のーすうえすたんほう
【英語】
Northwestern analysis method
【辞典・辞典種類】
歯科矯正学事典
【詳細】
(同)グレーバー法
 頭部X線規格側貌写真の分析法の1つである.ノースウエスタン法では基準平面としてS-N平面を用いる.これはセラ(S)およびナジオン(N)が頭部X線規格側貌写真上で比較的容易に決定できるからである.ノースウエスタン法の特徴は,頭蓋に対する上下顎の前後的関係をSNAとSNBを用いて評価し,上下顎歯槽基底部の前後的な関係をANBによって評価することで治療の難易を判断することである.治療目標の設定の際には側貌,顔面型,上下基底骨の関係を考慮して設定する.分析法はダウンズ法と同様に骨格型と歯槽型に分けられ,分析項目は以下の通りである.
1)骨格型
(1)上顎突出度:ナジオン(N)およびA点(A)を結ぶ直線とA点(A)およびポゴニオン(Pog)を結ぶ直線のなす角度である.上顎基底部の前突,後退の度合いを表す.平均値は1.62±4.78°である.
(2)基底部関係:SNAはS-N平面とナジオン(N)とA点(A)を結ぶ直線のなす角度であり,頭蓋底に対する上顎歯槽基底部の前後的評価を表す.SNBはS-N平面とナジオン(N)とB点(B)を結ぶ直線のなす角度であり,頭蓋底に対する下顎歯槽基底部の前後的評価を表す.また,上下顎の相対的な前後関係をANBで表す.SNA,SNB,ANBの平均値はそれぞれ82.01±3.89°,79.97±3.60°,2.04°である.
(3)下顎下縁傾斜角:S-N平面と下顎下縁平面のなす角度である.平均値は31.71±5.19°である.ダウンズ法の下顎下縁傾斜角と同様に臨床的に重要な計測項目であり,この値が大きな場合には下顎枝高の短小,下顎頭の成長が不足している場合が多く認められ,矯正治療を困難なものにすることが多い.また,日本人では白人と比較して上顎突出度,SNA,ANB,下顎下縁傾斜角が大きく,SNBが小さい傾向が認められる.
2)歯槽型
(1)上顎切歯歯軸傾斜角:上顎切歯歯軸とS-N平面がなす角度である.平均値は103.97±3.39°である.
(2)下顎切歯歯軸傾斜角(下顎下縁平面に対する):下顎切歯歯軸と下顎下縁平面がなす角度である.ツイードの三角のIMPAに相当する.平均値は93.10±6.78°である.
(3)下顎切歯歯軸傾斜角(咬合平面に対する):咬合平面と下顎切歯歯軸がなす角度である.歯槽型分析項目の中で最も重要な分析項目であるといえる.すなわち,下顎切歯歯軸は下顎の形態より,筋肉,
機能によって作られ咬合と密接に関連しているからである.平均値は69.37±6.43°である.
(1)上顎切歯歯軸と下顎切歯歯軸のなす角度:上顎切歯歯軸と下顎切歯歯軸のなす角度は矯正治療によって最も影響を受ける.平均値は130.98±9.24°である.
(2)顔面平面に対する上顎切歯切縁の位置:上顎中切歯切縁から顔面平面に垂直に降ろした線の長さ(mm)で表す.上顎切歯の突出は重要であり,患者にとっても最も関心のある部位である.平均値は5.51±3.15°である.
ノースウエスタン法はグレーバー(Graber, T.M.)が考案したことからグレーバー法ともよばれる.