指しゃぶり
- 【読み】
- ゆびしゃぶり
- 【英語】
- finger sucking
- 【辞典・辞典種類】
- 歯科矯正学事典
- 【詳細】
- (同)吸指癖
指を強く吸引する動作を常習的に行うものをいう.俗に「指しゃぶり」といわれるが,その本態はしゃぶる動作を単に持続性をもって行うのではなく,指の反復吸引にある.乳児期より幼児期にかけてみられるものは,授乳の代償的行為として行われる生理的現象という見方が一般的だが,この時期を経過してもなお自然に消退することなく,3歳以降にも継続,残留を認める場合には不正咬合の誘発が懸念される.
【原因】(1)乳幼児期以来の習慣の単なる継続,(2)家庭を含む周囲環境による情緒不安定,(3)乳児期における不適当な授乳法などさまざまな諸説がある.
【臨床所見】(1)下顎前歯の内傾を伴う歯列弓の平坦化と上顎前歯の前傾による開咬,(2)空隙歯列弓(とくに上顎前歯部),(3)上唇の弛緩,(4)下顎の後退,(5)高口蓋,(6)上顎歯列弓の狭窄などの特徴がみられ,これにより惹起されるのは,上顎前突,前歯部開咬,臼歯部交叉咬合,機能的交叉咬合などの伴う顎の偏位などがある.
【治療】心理的アプローチによる動機づけを重視し,可及的早期に習癖を中止させることが大切である.習癖の中止が若年齢であれば自然治癒に向かう可能性が高いが,習癖の中止のみで治癒が困難と判断される場合は,矯正装置による改善を考慮しなければならない.不良習癖除去(防止)装置として指サック,ハビットブレーカーを使用する.しかし,幼児心理を無視して習癖の中止を強制したり,十分な動機づけを行わず安易に指サックなどの器具に頼ると逆に悪化することがある.また,前歯部の開咬によって異常嚥下癖,舌前突癖などを随伴していることも多いため,合併が認められる場合はこれらの習癖に対する処置も同時に行う必要がある.
→弄指癖,拇指吸引癖