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リンガルブラケット法

【読み】
りんがるぶらけっとほう
【英語】
lingual bracket method
【辞典・辞典種類】
歯科矯正学事典
【詳細】
 矯正治療を希望する患者の多くは,審美的改善を期待している.リンガルブラケットはこの要望に応えて1967年に藤田により開発され,発展してきたもので,舌側に小さいブラケットやアタッチメントが接着されるので,外観に触れることはほぼない.しかし唇側法と異なり,アーチワイヤーの形態が小さく種々のベンディングを組み込むことが制限されるので,歯の移動の範囲が小さくなり動的治療期間が長くなると同時に,精密な咬合の仕上げには困難を極めることが多い.以下,リンガルブラケット法の特異点を記す.
1)アーチワイヤーの長さやブラケット間距離が唇側の場合と異なるため,使用するワイヤーの太さ,種類,ベンド量が異なる.
2)歯に加わる矯正力の作用点が異なるため,歯の動きが唇側の矯正法と異なる.たとえば,前歯に働く圧下力は前傾ではなく,より圧下の方向へ働きやすい.
3)前歯の後退は舌側への傾斜回転の動きとなりやすい.
4)上顎前歯舌側のブラケットに下顎前歯の切端が干渉することにより,臼歯群が離開して咬合が挙上し,前歯の圧下が行いやすい.
5)前歯の後退が行いやすく,臼歯部の固定の喪失が起こりにくい.しかし,逆に状況によっては前歯の圧下が進行しにくいこともある.そして大臼歯の回転,傾斜を引き起こしたり,小臼歯の回転,圧下,挺出を起こす場合もある.
6)下顎前歯舌側歯頸部には歯石が付着しやすく,そのほかの舌側部位においても刷掃効果の期待できないところが多いため,十分な管理と本人への口腔清掃の指導が必要である.
7)舌への干渉が強く発現することがあり,潰瘍を生じさせたりして,会話や食事に障害が起こり,装置に慣れるのに長期間を要することがある.
8)舌への障害が舌突出癖のある患者に対して除去装置として働き,効果的となることがある.
9)下顎前歯が舌側傾斜している症例,開口量が不十分な症例などには本装置の応用は困難である.
10)外科的矯正治療を必要とする症例は,手術中の管理が困難である.
→マルチブラケット法