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色素沈着(歯肉の)

【読み】
しきそちんちゃく(しにくの)
【英語】
pigmentation
【辞典・辞典種類】
歯周病学事典
【詳細】
生体内に色素が病的に沈着することをいう。生理的に体内にある色素の量が異常になる場合(ホクロのような黒色素)や、あらわれる場所が異常な場合(脂肪腫にみられるような脂色素)や、生理的には存在しない色素が病的に発生する場合(マラリヤ色素)などがあり、その由来は、体内で加工されて生ずるもの(内性色素)と体内から入ってくるもの(外来色素)とがある。
内性色素として生理的色素沈着は皮膚、歯肉および口腔粘膜などの正常な色素沈着であり、黄褐色のメラニンは球状色素で表皮細胞の一部、毛および結合組織性の色素細胞にみられる。メラニンの主成分は、チロシンの酸化によって生ずる5,6-ジオキシインドール(メラノーゲン)が酸化重合して生じたものである。口腔内のメラニン沈着は白人では少く黒人に著明である。口腔内の色素沈着の分布は黒人では歯肉で60%、硬口蓋で61%、粘膜で22%、舌で15%であるという。外来色素沈着として歯肉縁に黒褐色の線状着色(鉛縁)がみられる。これはすでにある歯肉炎の部位の毛細血管内皮細胞に血中の鉛が顆粒状に沈着し、硫化鉛となったため生じた慢性鉛中毒である。鉛を扱う職業(活字やペンキを取り扱う人、電池工場の工員)に多くみられる。外来色素沈着として歯の表面に沈着する着色dental stainsがある。着色は色素を有する細菌や食物や化学物質によって、通常無色の獲得被膜上に生ずる。歯面に沈着したものによって色は褐色、タバコによる着色、黒色(色素を有する細菌が原因であろう)、緑色(ペニシリンやアスペルギルスのようなカビ類、螢光性細菌によるとされている)、オレンジ色(Serratia marcescensとFlavobacterium lutescensがこの着色を起すとされている)、金属性着色(金属を含むチリを吸収したり、薬物として経口投与された場合に着色する。金属は、クチクラと結びつき、表面の着色を起したり、歯に浸透して永久着色を起す。銅粉は緑色、鉄粉は褐色、水銀やニッケルは緑色、マグネシウムや銀は黒色の着色を起す。鉄を含む薬物では黒色の硫酸第一鉄沈着を起す)と種々である。