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2024年1月号掲載

医療経済実態調査結果でみる歯科の窮状

 令和6年度診療報酬改定の基本方針では、基本認識の冒頭に物価高騰・賃金上昇という文言が記載されています。その背景として、令和5年春闘の主要企業の賃上げ率に対し、医療・介護分野の賃上げ率はそのレベルに追いついていないという点が示されています。

 第24回医療経済実態調査は、医療分野の医療費配分を検討するうえで重要視されていますが、個人立歯科診療所の結果では、新型コロナウイルス感染症関連の補助金がほとんどないなかで損益差額は対前年度比で▲3.9%と大きく減少しています。個人立歯科診療所の損益差額には開設者の報酬に相当する部分が含まれており、従業員手当などを上げるために切り詰めた結果とも見て取れます。またこの損益率は、過去と比較しても非常に低い結果となっており、小規模な歯科診療所は限界に近いのではないかと危惧されます。さらに、歯科衛生士の給与水準も他の医療職種と比較しても、非常に低いまま推移しています。

 医療経済実態調査は、診療報酬改定の基礎資料を得ることが目的となっていますが、この実調を活用して本当に医療費の配分を決めているのかどうか疑問に感じます。

 歯科診療所の経営状況はここ数十年低迷していますので、今後進む歯科医師自体の高齢化や医療DXおよび人材確保などへの対応に対し、歯科診療所間の格差も年々大きくなると推測されます。安全・安心な地域の要となる歯科医療提供を継続的に確保するための対策や検討が最重要と思われます。