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2024年1月号掲載

ITI名誉フェローに就任した歯科医師

エビデンスベースのインプラント歯学教育・臨床の推進に尽力したい

 The International Team for Implantology(以下、ITI)名誉フェローに2010年に添島義和氏が就任し(アジア初)、2020年には瀬戸晥一氏と日本から2名の名誉フェローを輩出している。そして2023年5月、勝山英明氏(東京都・神奈川県開業)が就任し日本で3人目の名誉フェローが誕生した。勝山氏は1993年にITIフェローに就任以降、ITIの発展やインプラント歯学の技術革新に貢献してきた。そこで本欄では、ITIの理念やこれまでの歩みとともに、勝山氏の考える卒後教育についてうかがった。

勝山:このたび、2023年5月にポルトガルにて開催されたITI Annual Conference 2023にて、名誉フェローに就任いたしました。ITIは、自主的かつ理想的に研究と発展を追及できる専門家同士のネットワークを築くことを目的として、1980年にインプラント歯学の各分野において明確なビジョンをもった12名の専門家によって設立された学術組織です。

 ITIは「科学的独立性」と「非営利思考」の2つの基本理念に掲げ、教育と研究を中心にインプラント歯学の医療的、臨床的専門知識の発展と奨励に尽くしてきました。そして、専門医がエビデンスに基づいて最適な治療を提供することで、患者の利益や健康に資することを目指しています。また、各国の若い人材の育成に力を入れ、現在では会員数が20,000名を超える組織にまで成長を遂げました。

 近年、従来の座学の研修から実務まで含めた教育の需要が高まるなかで、特にインプラント治療は卒後研修をつうじて手技・手法を学ばれる先生方が大多数かと思います。多くの場合、研鑽の場としてセミナーを受講するかと思いますが、卒後研修の充実や一貫した教育の確立を見据えるうえで、従来の「臨床医の主観に基づいたセミナーが教育として適切なのか」は一考する必要があると考えています。なぜならば、医療行為の指導を行うにあたりエビデンスに基づいた教育は不可欠であり、指導医ごとに異なるカリキュラムでは教育の標準化や一貫性が担保されず、誤った教育につながる懸念が残るからです。「エビデンスに基づいた明確な基準でもって定められた適格者」が厚労省の求める広告できる専門医であり、それはわれわれITIが目指してきた「社会の求めるインプラント臨床医」の育成と共通しています。

 インプラント治療において、テクニックベースでは日本の先生方は優秀といって良いでしょう。しかし、世界基準で比較すると最先端の潮流には徐々に乗り遅れつつあります。また、発展途上国ではインプラント治療のリープフロッグ現象(最先端技術の導入により、既存技術で成長を遂げてきた先進国よりもさらなる発展を遂げる現象)が起きつつあります。日本は「インプラント先進国」という思い込みは捨て、グローバルスタンダードの見地をもってインプラント治療を行っていただきたいですし、私も名誉フェローとして少しでも日本の歯科医療の発展に貢献できるよう精進する所存です。