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2015年8月9日

第2回「被災×社会的弱者」講演会開催

講師に社会福祉士の中野加奈子氏を招聘

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 さる8月9日(日)、東京医科歯科大学において、第2回「被災×社会的弱者」講演会(女川歯科保健チーム主催)が「被災×貧困―被災により、生活困窮者の生活はどう変わり、何がもたらされたのか―」をテーマに開催された。

 講師には、社会福祉士として貧困問題や生活困窮者の自立支援活動に取り組む中野加奈子氏(大谷大文学部社会学科講師)を招聘。中野氏は、阪神淡路大震災の被災者の状況や1998年より勤務していた尼崎市内の医療機関での経験を披露し、現場の災害復興住宅で見えてきた、慣れない暮らしやコミュニティが形成できないことによるうつ病や自殺、アルコール依存症の発症など、さまざまな問題を挙げた。また、富裕層、中間層、貧困層の復興状況から被災は平等でないことを強調し、耐震性の乏しい木造住宅など粗悪な住宅が供給されてきた歴史を紐解きながら、被災後に非常に厳しい生活環境を強いられた事例を紹介した。そして、もともと根底にあった貧困や差別などが解消されないまま、被災によってさらなる生活環境が悪化し深刻化する「貧困の再生産」の考え方を示した。

 最後に、復興の影で被災の影響は形を変えながら次世代に引き継がれているとしたうえで、「自然災害は防ぐことはできないが、人災は防ぐことができる」と述べ、中間層や貧困層が自立できる生活の安定のための医療・社会福祉・社会保障の整備に加えて、被災時の支援の必要性を訴えた。