萬人一語

歯科医師会の持続可能な支援と啓発へ

2023年2月号掲載

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2023年2月号掲載

歯科医師会の持続可能な支援と啓発へ

 「よい歯のコンクール」や「8020コンクール」は各地で継続されている。

 正式な設定は不明だが、映画『火垂るの墓』の節子と『となりのトトロ』のサツキは生まれが近い設定で、存命なら2021年にほぼ80歳になる。8020運動をスローガンとして掲げることは否定しないが、80歳以上の高齢者に残存歯数での表彰には少々抵抗を感じてしまう。当院の該当者には節子のような親や家を失った方はいなかった。12歳のコンクールも然り、カリエスフリーで歯肉炎症もない児童でも著しい叢生など不正咬合があれば歯科医師会から表彰されることはない。矯正治療が受けられる親の経済力が必要である。これらもまた本人の努力ではないSDH(健康の社会的決定要因)といえよう。

 健康格差問題への支援と啓発活動を続けていると、地元ロータリークラブとの協働にたどり着いた。企業では、企業の社会貢献(CSR)から企業戦略の一環として社会への貢献活動(CSV)の流れもあり、むしろ単体活動のメリットが大きいかも知れない。しかし、歯科医師会活動はCSRであり、避けて通れない会員の高齢化に起因する財源問題がある。

 そこで地域との連携や他団体との協働によるアプローチは、これまで歯科医師会の活動を知らなかった市民へ周知にもつながり、相互のプレゼンス向上になると期待するが、会員の理解には時間が必要だろう。子どもの健康格差へのアプローチは対象が少数だが、社会に必要な取り組みであり、このような活動を通じて歯科医師会は地域の大切なインフラであると再認識している。