萬人一語

世代を越えた集団アプローチの重要性

2023年5月号掲載

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2023年5月号掲載

世代を越えた集団アプローチの重要性

 昨年末、各都道府県知事宛に、厚生労働省医政局長及び健康局長連名通知として「フッ化物洗口の推進に関する基本的な考え方」が発出されている。また日本歯科医師会は、4月に発足した「こども家庭庁」への要望事項の1つとして、小学校、中学校におけるフッ化物洗口の推進を挙げている。う蝕予防のためのフッ化物応用の効果と安全性は、科学はもとよりWHOをはじめ、世界の専門機関、長年にわたる世界中での実績が証明している。

 フッ化物の応用法の1つとして、ポピュレーションストラテジーであるフロリデーション(水道水フッ化物濃度調整)や学校などでの集団的フッ化物洗口がある。なかでもフロリデーションは、公衆衛生的施策の真髄といわれている。現在日本では、残念ながらフロリデーションが実施されていない。子どもを対象とした集団的フッ化物洗口は、都道府県により差はあるが普及拡大し続け、その成果が報告されている。

 1970年に新潟県弥彦村で始まった集団的フッ化物洗口は、3世代を迎えていることに着目してほしい。私の町では27年目、2世代目を迎えその効果は、親子の口腔内を覗き込めば一目瞭然である。

 先日、WBCで活躍した大谷翔平選手をはじめ、メジャーリーグの選手や他国の選手の多くがフロリデーションの恩恵に浴している。水道水フロリデーションが1945年に始まった米国では、4世代にわたっていることを再認識したいものだ。その次善の策とはいえ、集団的フッ化物洗口の実施が遅れると世代を越えた差となって現れる。