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2016年4月15日

第70回NPO法人日本口腔科学会学術集会開催

「口腔疾患治療の科学革命(パラダイムシフト)」をテーマに

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 さる4月15日(金)から17日(日)の3日間、福岡県歯科医師会館および福岡国際会議場(福岡県)において、NPO法人日本口腔科学会第70回学術集会(喜久田利弘大会長、丹沢秀樹理事長)が開催された。4月14日より発生した平成28年熊本地震の影響もあって、参加者数は例年より少ない約1,000名(4月19日現在集計中)となった。日本医学会における歯科唯一の分科会である本学会は今回70回の節目となる開催を迎え、口腔科学の発展による、患者へのより一層の良好な口腔医療環境の提供をめざして知識や情報の共有化をはかることを主眼に、各種講演やシンポジウム、ポスター発表など、多彩なプログラムにて展開された。

 シンポジウム「薬剤関連性顎骨壊死(MRONJ)の最新知見を科学する」(座長:前田初彦氏、愛院大教授/森田章介氏、大歯大教授)では、「病期に応じた対応について -特にstage2、3に対する外科療法」(冨永和宏氏、九歯大教授)、「MRONJに対する高気圧酸素療法(HBO)の応用とFDG- PETによる評価」(北川善政氏、北大教授)、「薬剤関連性顎骨壊死(MRONJ)の病因と病理組織所見」(池田 通氏、長崎大教授)の各テーマにて講演。2014年のAAOMS(米国口腔顎顔面外科学会)のポジションペーパーの改変を受けて、本邦においてもMRONJへの対応に関心が高まるなか、発症の機序や臨床的に関心の高いstage2患者への治療など、最新の情報が紹介され、注目を集めていた。

 特別講演「齲歯と心臓病:ビッグデータから考える」(朔 啓二郎氏、福岡大教授)では、近年齲歯・歯周病と動脈硬化性心血管疾患との関連が話題となっているが、初めて口腔疾患と院外心停止や心臓突然死との関連を、消防庁と共同で約80万人のビッグデータをもとに検討した研究について報告。齲歯有病率は、総院外心停止発生率、心原性・非心原性院外心停止との間に相関はなかったものの、65歳以上の男性では齲歯と心原性院外心停止に有意な正相関があったことを紹介した。循環器の専門家の立場から、心肺蘇生法やAEDの使用法の啓発活動の必要性を訴えるとともに、心臓病の広義のバイオマーカーとしての口腔衛生の重要性を強調した。

 市民・県民公開シンポジウム「広域災害時における歯科医療提供体制について」(座長:丹沢秀樹理事長)では、冒頭、今般の熊本地震について、現地から中山秀樹氏(熊本大教授)が電話にて報告。水不足が一番の問題で、一時は透析治療ができなかったこと、大学病院は無事なものの、熊本市民病院が倒壊のおそれがあるため、入院患者を80数名受け入れ、さらに鹿児島や久留米の病院に移送された患者もいることなど、現場の切実な状況を伝えた。本編では、過去の震災における経験やそれらをふまえた体制のあり方等について、「広域災害における口腔保健の重要性 ~阪神・淡路大震災の経験から」(足立了平氏、神戸常盤大教授)、「東日本大震災からの報告と提言」(佐々木啓一氏、東北大教授)、「歯科医師会の災害時の役割」(柳川忠廣氏、日本歯科医師会副会長)、「広域災害時における歯科医療体制に対する現在までの報告・提言のまとめ」(椎葉正史氏、千葉大准教授)の各演題にて講演。まさに喫緊の課題として認識を新たにする機会となった。

 次回、第71回学術集会は、きたる2017年4月26日(水)から28日(金)の3日間、ひめぎんホール(愛媛県)において開催予定。