社会|2025年5月9日掲載
牧野正志氏・吉野智一氏著『アライナー矯正治療戦略』出版を記念して
“ケープレ”スピンオフ企画「片側性二級症例の治療戦略」開催

さる5月7日(水)、GREEN'S ORTHO(小松昌平代表)が、牧野正志氏(千葉県開業)を演者として“ケープレ”スピンオフ企画「片側性二級症例の治療戦略」をオンライン開催した。
GREEN'S ORTHOは「矯正治療を楽しく学ぶ」をテーマとして、今後を担う若手世代向けの学びの場を創出することを目的に、矯正歯科治療関連コンテンツをオンラインにて発信している。GREEN'S ORTHOの恒例企画である“ケープレ”は佐野良太氏(佐賀県開業)、牧野氏、大門 茂氏(福岡県開業)の3名が自身の手掛けたさまざまな症例を供覧し、各状況におけるテクニックの活用法やアイデアをディスカッションとともに共有していくものである。
今回、同企画メインメンバーの牧野氏が、クインテッセンス出版より『アライナー矯正治療戦略 メカニクスから考える治療を成功に導く戦略体系』(吉野智一氏[埼玉県開業]との共著)を出版したことを記念し、スピンオフ企画として片側性二級症例の治療戦略について知見を共有した。書籍ではアライナーを用いたさまざまな不正咬合に対する基本的な治療戦略およびメカニクスと、実際の応用について解説されているが、本会ではブラケット・ワイヤーによる治療戦略を扱った。
Ⅱ級不正咬合はもっとも矯正歯科が多く扱う不正咬合であるが、そのうち左右でⅡ級程度の異なる症例は、抜歯・非抜歯、あるいはどこの歯を何本抜歯するかの判断に迷うことが多い。牧野氏は的確・迅速な判断と治療方針確立のために、こうした症例をまず「上顎大臼歯位置の左右差」か「下顎大臼歯位置の左右差」かに分け、さらに側貌の状況と叢生量から合計5つの治療戦略に分類する方法をとっており、その分類の基本的な流れについて説明した。そして、「治療方針でミスを犯してしまうと上下顎歯列正中線が顔面正中線から偏位してしまい、患者からクレームを受けることとなる」と述べたうえで、正中線の重要性について強調した。また、患者の正中線偏位許容量について、さまざまな文献から正中線から片側2mm以内、角度は5°以内に収めることを個人的な目安としていると補足した。
後半は成人症例を4例(非抜歯治療、上顎前突、下顎左方偏位、前歯前突)供覧しながら、実際の症例における分類および治療方針決定の流れが解説された。“ケープレ”では歯科矯正用アンカースクリューについても扱うことも少なくないため、本講演でも牧野式TAD植立時の工夫が複数共有された。また片側性Ⅱ級症例では上顎第二小臼歯を抜歯すると治療終了後の歯列が安定しやすいとの臨床実感も述べられ、抜歯部位に迷うことの多い事案であるだけに、聴取者からは多くの質問が寄せられた。
なおクインテッセンス出版主催による牧野氏と吉野氏出演のSNS Live Quinthouse#176がきたる5月21日(水)20:00~20:30に、WEBINAR #72 アライナー矯正治療戦略 【II級不正咬合】が5月29日(木)20:00~21:30に予定されている。