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2021年9月19日

深井保健科学研究所、第20回コロキウムをWeb開催

「健康格差縮小のための口腔ヘルスサービスへのアクセス ―そのバリアをどう取り除くか―」をテーマに

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 さる9 月19 日(日)、深井保健科学研究所(深井穫博所長、埼玉県開業)による第20回コロキウムが「健康格差縮小のための口腔ヘルスサービスへのアクセス ―そのバリアをどう取り除くか―」をテーマにWeb開催され、おもに公衆衛生や疫学を専門とする歯科医師らが多数視聴し盛会となった。

 日本では本年、国民皆保険制度がスタートして60年目、歯科口腔保健法が制定されてから10年目の節目となった。グローバルな観点では、本年5月に第74回WHO総会で口腔保健に関する決議が採択され、UHC(ユニバーサルヘルスカバレッジ)に対する歯科医療・口腔保健サービスの位置づけをいかにして明確にするかが国際的な課題となっている。このような背景をふまえ、本コロキウムでは日本の口腔ヘルスサービスのアクセスの現状を評価し、何がそのバリアになっているのか整理し、そのバリアを取り除くための方策について議論された。

 本会では、小川祐司氏(新潟大教授)、吉野浩一氏(神奈川県勤務)の司会のもと、まず深井氏による主旨説明が行われ、その後、4つのセッションが開催された。

 セッション1「歯科受診・受療行動の実態と格差」は恒石美登里氏(日本歯科総合研究機構)の座長のもと、安藤雄一氏(国立保健医療科学院)、相田 潤氏(医歯大教授)がそれぞれ講演。なかでも相田氏は、「日本人の受診率は本当に低いのか?」について、OCEDのデータを提示し、じつは日本はトップの受診率であることを紹介。その理由として、日本の治療費が安価であることなどを示唆した。

 セッション2「医療保険・介護保険制度における歯科受診・受療」は嶋崎義浩氏(愛院大教授)の座長のもと、竹内研時氏(名古屋大准教授)、古田美智子氏(九大講師)が講演。なかでも古田氏はデータをもとに、「女性」「高齢者」の定期受診率が高いこと、一方、「男性」「若年者」「収入が低い人」の定期受診率が低いことなどを紹介した。

 セッション3は「健康政策と歯科医療」をテーマに、内藤真理子氏(広大教授)、遠藤眞美氏(日大松戸講師)の座長のもと、上野尚雄氏(国立がん研究センター)、百合草健圭志氏(静岡がんセンター)、渡邊 裕氏(北大准教授)が講演。なかでも上野氏は、がん患者に対する医科歯科連携の変遷と現状について解説するとともに、がんになっても安心して必要な歯科的支援を受けられることの重要性を述べ、患者の不安を払拭し安心を提供するのは「適切な情報」であるとまとめた。

 セッション4は「コロナ禍の歯科受診・受療行動」をテーマに、福田英輝氏(国立保健医療科学院)の座長のもと、松山祐輔氏(医歯大)、岩崎正則氏(東京都健康長寿医療センター研究所)がそれぞれ講演。なかでも松山氏は、コロナ禍における歯科受診抑制と歯痛の関連、歯科受診抑制の決定要因などについて報告した。

 セッション後には有識者による指定発言や質疑応答が行われた。最後に、神原正樹氏(神原グローバルヘルス研究所)、宮崎秀夫氏(明倫短期大教授)、花田信弘氏(日本健康ライフデザイン機構)が総括コメントを寄せた後、深井氏が今後のコロキウムの方向性についてふれ、記念すべき第20回コロキウムは熱気に包まれたまま閉会した。なお、深井氏は現在、ザ・クインテッセンス誌にて「New Public Healthと歯科医療」と題し連載中。