2022年8月28日掲載

「口腔と全身の健康-過去・現在・未来」をテーマに

深井保健科学研究所、第21回コロキウムをWeb開催

深井保健科学研究所、第21回コロキウムをWeb開催
 さる8月28 日(日)、深井保健科学研究所第21 回コロキウム(深井穫博所長)が「口腔と全身の健康-過去・現在・未来」をテーマにWeb開催され、公衆衛生や疫学を専門とする歯科医師、歯科衛生士らが多数視聴し盛会となった。本会では、吉野浩一氏(神奈川県勤務)による司会進行のもと、まず所長の深井氏(埼玉県開業)による主旨説明が行われ、その後4つのセッションに分けて講演が行われた。

 セッション1「コホート研究およびリアルワールドデータを用いた口腔と全身の健康との関連に関する研究展開」では、宮崎秀夫氏(明倫短期大)の座長のもと、古田美智子氏(九大)、佐藤美寿々氏(東大)がそれぞれ講演し、その後、岩崎正則氏(東京都健康長寿医療センター研究所)が追加発言を行った。なかでも古田氏は、口腔と全身の健康に関した国内のコホート研究における課題について言及するとともに、コホート研究で用いられる「歯周病の定義」が複数存在することの問題点についてふれた。

 セッション2「統計手法を用いた観察研究からの因果推論の可能性」では、竹内研時氏(東北大)の座長のもと、野村義明氏(上海理工大)、松山祐輔氏(医歯大)がそれぞれ講演。なかでも松山氏は、「自然実験による口腔と全身の因果関係の解明」と題し、小さい時に水道水フロリデーションが行われた地域に一定期間在住していた者は、そうでなかった者に比べて高齢期における歯の本数が多かったデータなどを紹介した。

 セッション3「歯科口腔保健と医療費」では、福田英輝氏(国立保健医療科学院)の座長のもと、嶋崎義浩氏(愛院大)、恒石美登里氏(日本歯科総合研究機構)による講演がそれぞれ行われた。なかでも恒石氏は、NDBなどのいわゆるビッグデータの利点と欠点について解説。また、医科に比べて歯科では電子レセプトのオンライン化が遅れている現状などについて紹介した。

 セッション4「実践および健康政策につなげる研究展開と基盤整備」は、小川祐司氏(新潟大)、百合草健圭志氏(静岡がんセンター)の座長のもと、花田信弘氏(鶴見大)、竹内研時氏、相田 潤氏(医歯大)、安藤雄一氏(国立保健医療科学院)、岡本悦司氏(福知山公立大)、上野尚雄氏(国立がん研究センター)による講演がそれぞれ行われた。なかでも上野氏は、がん患者の口腔管理の臨床実装、すなわち地域や部署による格差を減らすために、まずは院内の看護師と共同し、PDCAを回し現場の改善を続けるといった、足元からの改善が重要であると述べた。

 各セッション後には質疑応答が行われ、最後に神原正樹氏(神原グローバルヘルス研究所)が「デジタル化社会における歯科医療・口腔保健」と題して総括コメントを寄せた後、深井氏がまとめと提言を行い、盛会裏に終了した。

 なお、深井氏は現在、ザ・クインテッセンス誌にて「New Public Healthと歯科医療」と題し連載中である。

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