2022年11月4日掲載

「温故知新 ―咬合外科学を再考する―」をテーマに

(公社)日本口腔外科学会、第67回総会・学術大会を開催

(公社)日本口腔外科学会、第67回総会・学術大会を開催
 さる11月4日(金)から6日(日)の3日間、幕張メッセ国際会議場(千葉県)において、第67回公益社団法人日本口腔外科学会総会・学術大会(外木守雄大会長、桐田忠昭理事長)が、現地参集とWeb配信を併用したハイブリッド形式にて開催された。プログラムは、会場での特別講演2題、教育講演2題、関連学会理事長講演1題、海外招聘講演1題、シンポジウム11題、合同シンポジウム2題、一般口演などに加え、オンデマンドによるポスター発表、ミニレクチャー39題、ビデオレクチャー12題と、充実した内容で展開された。

 特別講演「心臓外科医という天職を得て」では、2012年に天皇陛下(現上皇陛下)が歴史上初の心臓外科手術を受け、その執刀医として注目を集めた天野 篤氏(医師、順天堂大特任教授)が登壇。最高の手術とは患者が手術を受けたことを忘れてしまうほどの日常を取り戻すことと述べ、医療として求められる時代の要請に向き合いながら、感謝の気持ちをもって患者のために有用な外科治療を追求し続けるとの決意を、一途一心に取り組んできた心臓外科医としての歩みを交えて力強く語った。

 関連学会理事長講演では、2026年に100周年を迎える日本整形外科学会より理事長の中島康晴氏(医師、九大教授)が「整形外科学の現在、過去、未来」とのテーマで登壇。このなかで、超高齢社会の日本において運動器疾患により移動機能の障害を抱える高齢者が増えており、同学会では2007年よりロコモティブシンドローム(ロコモ:運動器症候群)の概念を提唱し、運動機能の維持、改善によるロコモ予防を推進してきたことを解説。さらに2022年4月に関連学会との合同による「フレイル・ロコモ医学会宣言」を発表するとともに、80歳でもみずから外出できる状態をイメージした「80GO(ハチマルゴー)運動」を開始し、5月にはスマホで計測できる「ロコモ年齢」アプリの配信をスタートするなど、最近の取り組みを紹介。学会として、健康寿命を延ばし、人生100年時代をよりいっそう健やかに過ごすための活動を推進していきたいとの見解を述べた。

 「シンポジウム MRONJ ポジションペーパー2022 ~医科歯科連携に基づく的確な予防・診断・治療をめざす~」は、2016 年に日本のポジションペーパーが発表されて5 年以上が経過したあと、発生頻度、発症原因、メカニズム、予防法、治療方法など本邦における新しい知見が蓄積されてきたことを受け、今回日本口腔外科学会が中心となりMRONJ ポジションペーパー2022 を策定する運びとなり(現在作成中)、日本骨粗鬆症学会との合同で開催された。

 まず栗田 浩氏(信州大教授)が「ポジションペーパーの改訂:骨吸収抑制薬の投与と歯科治療、MRONJ の治療と管理」と題した講演で、抜歯の際の休薬について、システマティックレビューにおいて休薬を支持する根拠は得られなかったこと、MRONJの治療については、治癒を目指した外科的治療を推奨するデータがそろいつつあることを紹介した。

 つぎに井上大輔氏(医師、帝京大教授)が「MRONJ position paper 2022  ~骨粗鬆症薬を処方する内科の立場から」のなかで、ビスホスホネート(BP)製剤やデノスマブは使用をやめると効果が落ち、骨折のリスクを高めることから、抜歯等に際しても継続が原則と述べるとともに、治療前の紹介など、医科と歯科が情報共有のうえ連携して取り組むことの重要性を指摘した。

 続いて、「骨卒中予防の重要性」と題して萩野 浩氏(医師、鳥取大教授)が登壇。骨卒中は、高齢者に多数生じる大腿骨近位部骨折や脊椎椎体骨折を呼称するための造語で、高齢者では骨折により生活機能が著しく低下し、健康寿命を短くすることが知られており、骨折ではなく“骨卒中”とよぶことでその重篤性を広く啓発する試みが進められていると解説。また骨折によりさらなる二次骨折のリスクが高まることも説明し、骨折リスクに応じた薬剤投与は必須であり、その情報を医科と歯科で共有し連携して対応することがきわめて重要と強調した。

 最後に、岸本裕充氏(兵庫医科大教授)が「MRONJ ポジションペーパー2022 年改訂版」と題し、2016年のポジションペーパーではARONJとした呼称をBP製剤やデノスマブ以外の他の薬剤との併用による発症の存在も注意喚起するため、MRONJに変更すること、ステージ分類では、ステージ0は2022年版でも残すが、現在のMRONJ の診断基準を満たさない病態と位置づけること、ステージ分類中の画像診断所見の記載については削除となること、などの方向性を解説した。

 昨年に続いてのハイブリッド開催であったが、5,500名以上もの関係者が参加登録し、関心の高さがうかがわれた。現地での開催項目は限られていたものの、場内には多数の参加者がつめかけ、熱気にあふれていた。なかでも、上記MRONJのシンポジウムは、広い会場が満席で立ち見が出るほどの盛り上がりをみせ、コロナ禍前の活気が戻りつつあるように感じられた。なお、オンデマンド配信は引き続き2022年11月30日(水)まで行われている。

 次回学術大会は、きたる2023年11月10日(金)から12日(日)の3日間、大阪国際会議場(大阪府)で開催予定である。

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