2022年11月23日掲載
「Paradigm Shift~舌側矯正治療の変遷と未来~」をテーマに
第34回日本舌側矯正歯科学会学術大会・総会開催

今回の学術大会は、デジタル技術のみならず、これまで矯正歯科界に起こってきたさまざまな技術や装置の進歩と変遷を取り入れた矯正歯科治療のより良いありかたやコンビネーションについて学ぶことができるプログラムとなっており、開会あいさつにて青木大会長は、「舌側矯正治療、唇側矯正治療、アライナー矯正治療や歯科矯正用アンカースクリュー、デジタルセットアップなどさまざまな治療法や装置が臨床応用できる昨今、それらの長所、短所を生かすためには術者の見識と診断力が必要」と述べた。
プログラムのうち特別講演では、後藤滋巳氏(愛院大歯学部教授)が「歯科矯正用アンカースクリューの薬事承認と実際」と題し、矯正歯科界にとって大きなパラダイムシフトとなった歯科矯正用アンカースクリューが、当時いかにして日本で薬事承認・保険収載に至ったか、またその中心となった演者が、実際にどのように歯科矯正用アンカースクリューを植立し治療を行っているかが解説された。また居波 徹氏(京都府開業)が「リンガル矯正治療の方針決定と安定性」と題し、エッジワイズ法レベルアンカレッジシステムを根底とする舌側矯正治療が、器具や装置の変化によってどのように変遷してきたかについて、Incognitoなどのリボンアーチアプライアンスを中心に述べた。
さらにシンポジウム「矯正装置の進化・コンビネーションを再考する」では、竹元京人氏(東京都開業)による「デジタルセットアップを用いたリンガルストレートワイヤーシステム」、布川隆三氏(大阪府開業)による「臨床的治療効果を引き出すリンガルブラケット治療法の実際」、大谷淳二氏(愛媛県開業)による「リンガルアプライアンスにおける歯の移動様相について アンカースクリューを用いたアプローチ」、有本博英氏(大阪府開業)による「矯正歯科医が操る“フォース”としてのアライナー型矯正装置」と、演者それぞれが熟知する矯正歯科治療技術と舌側矯正治療とのコンビネーションや使い分けについて講演された後、ディスカッションが行われた。いずれの講演でもMSE (上顎骨支持式急速拡大装置)について言及されており、その取り扱いについて議論がなされた。また今後の矯正歯科治療の展望として、「自動運転(オートパイロット)」が複数演者から言及され、装着後の調整が不要な矯正装置の開発について意見が述べられた。
一方総会では、吉田哲也同学会専務理事が次期理事長に選出され、相澤理事長から役職が引き継がれた。
次回学術大会・総会は、きたる2023年11月23日(木)に京都烏丸コンベンションホール(京都府)において「診断力を高める」をテーマに開催予定である。