2023年9月3日掲載

「これからのカスタムメイドデジタル矯正」をテーマに

第2回日本デジタル矯正歯科学会、学術大会・総会開催

第2回日本デジタル矯正歯科学会、学術大会・総会開催
 さる9月3日(日)、第2回日本デジタル矯正歯科学会学術大会・総会(深澤真一大会長、三林栄吾理事長)が、「これからのカスタムメイドデジタル矯正」をテーマに、東京国際フォーラム(東京都)の現地およびWeb配信のハイブリッド形式にて開催された。会場・オンライン合わせて387名が参加した(オンライン視聴期間は2023年9月11日から30日まで)。

 深澤大会長の挨拶の後、すでにデジタルソリューションが広く普及している補綴歯科分野から、馬場一美氏(昭和大教授)が「歯科医療の近未来―データベース基盤型歯科医療―」、近藤尚知氏(愛院大教授)が「デジタルワークフローの臨床応用の現状と限界―口腔内スキャナーとCAD/CAMの精度を測る―」と題して講演した。そのうち馬場氏は、デジタル化社会は必ず到来するものであり、たとえばAI作文を学生に禁じるのではなく、教員側がそれを見越した課題を出すという、起こりうることを包括した思考で今後のデジタル化社会をとらえていく必要があることを述べた。そのうえで現在の補綴歯科におけるデジタルソリューションとして用いられている機器、それに適合する補綴材料、実際の活用方法について説明した。さらにデジタル化のもっともすぐれた利点は膨大な治療データベースをつくれることであり、今後の歯科臨床におけるビッグデータの活用の展望などが述べられた。

 またアライナー矯正治療のトピックとして尾島賢治氏(東京都開業)による「アライナー型矯正治療における可能性と限界」、荻野 茂氏(京都府開業)による「医院価値を強化し、患者価値を創造するデジタルトランスフォーメーション(DX)―現場力×デジタル×創造力―」、矯正歯科治療に活用できるデジタルデバイスのトピックとして金尾 晃氏(岡山県開業)による「Digital-Based Orthodontics 三次元デジタル矯正歯科学」が行われた。ここではそれぞれが試行錯誤して矯正歯科治療に携わってきた道のり、そして現在の最適解としてのソリューションと臨床結果が示された。

 海外からも演者がビデオ参加した。韓国から大韓デジタル矯正歯科医会会長のGye Hyoung Lee氏が「Use of Dental Avatar in Orthodontics」として患者の骨格、歯列、顔面(軟組織)をそれぞれ3Dデータ化して統合し、治療シミュレーションに役立てるソリューションについて解説した。また『DIY Orthodontics Design It Yourself』(日本では『基礎から学ぶデジタル時代の矯正入門 IOSと3Dプリンターを応用したカスタムメイド矯正装置』として小社より翻訳・出版)の著者Nearchos C. Panayi氏(キプロス開業)が、「Printed aligners and customized brackets: New Technologies and their Challenges in Orthodontic」と題し、矯正歯科専用CADソフトウェアUBracketsを用いた、院内におけるカスタマイズブラケットの3D設計・プリント、また新たな樹脂の開発によって広がった、院内におけるアライナーのカスタマイズプリントの可能性について述べた。

 デジタル矯正歯科における世界と日本の歩みの速さの違い、またこのカテゴリにおける発展・開発のスピードの速さと投じられる情報の多さが浮き彫りとなった学術大会となった。

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