社会|2024年9月10日掲載
内製化がもたらすアライナー矯正治療の未来像を探る
第1回日本インハウスアライナー矯正歯科研究会開催
さる9月7日(土)、8日(日)の2日間、東京ポートシティ竹芝(東京都)において、第1回日本インハウスアライナー矯正歯科研究会(日本アライナー矯正歯科研究会主催)が開催された。本会には日本人演者が16名、併催された「Shape Memory Aligner Asian Summit 2024」にはアメリカ、韓国、台湾、タイ、ベトナム、インドから海外演者9名が登壇し、現地開催とWeb配信のハイブリット形式で行われた本会は、合計300名以上を集める盛会となった。
そのうち、本研究会主宰である尾島賢治氏(東京都開業)は、講演「Why In-house aligner? Why Shape Memory Aligner?」で、アライナー矯正治療の歴史と2014年からスタートした日本アライナー矯正歯科研究会の10年の歩みを振り返り、そして次の10年のアライナー矯正治療として、より臨床の幅を広げてくれるインハウスアライナーの発展性に期待し、今回の会を「第1回日本インハウスアライナー矯正歯科研究会」として開催した趣意を説明した。
Ki Beom Kim氏(米国・セントルイス大教授)による「New Paradigm of Clear Aligners: Harnessing the Potential of 3D Printing and Biomechanical Advantages」では、熱形成アライナーに対するダイレクトプリントアライナーの利点、また、新しい素材を使用したシェイプメモリーアライナー(Graphy社、韓国・ソウル)の有効性を症例や最新のデータを交えて解説した。Ravindra Nanda氏(米国・コネチカット州立大名誉教授)による「Shape Memory Aligners: Future is Now!」では、シェイプメモリーアライナーのバイオメカニクスを解説し、これまでの熱形成アライナーと異なり、小さい力を継続的に歯にかけることができるため、より歯の移動の予測実現性が高まるとの見解を述べた。
山﨑長郎氏(東京都開業)による「Interdisciplinary management of Ortho-Retractive Treatment」では症例を通してアライナー矯正治療と補綴治療の連携の重要性が説かれた。また渡邉仁資氏(東京都勤務)による「当院におけるシェイプメモリーアライナーのアタッチメントの使用率と臨床変化」では、シェイプメモリーアライナーの導入によりほぼアタッチメントなしでの治療が可能となり、審美性と装着感の改善だけでなく、トラブルの軽減や治療効率が向上した点などを自院のデータをとおして示した。
2日間をとおして、国内外でのインハウスアライナー、シェイプメモリーアライナーを用いた矯正臨床の実際と患者・歯科医師双方が得られるメリットが、小児治療、他装置との併用、包括的治療などさまざまな視点から語られ、デジタル機器やマテリアルによる進化がもたらしたインハウスアライナーの飛躍とこれからのアライナー矯正治療の1つの方向性が示される内容となった。
なお、第2回日本インハウスアライナー矯正歯科研究会は、きたる2025年8月30日(土)、31日(日)の2日間、同会場で開催予定である。