令和6年度診療報酬改定の基本方針では、基本認識の冒頭に物価高騰・賃金上昇という文言が記載されています。その背景として、令和5年春闘の主要企業の賃上げ率に対し、医療・介護分野の賃上げ率はそのレベルに追いついていないという点が示されています。 　第24回医療経済実態調査は、医療分野の医療費配分を検討するうえで重要視されていますが、個人立歯科診療所の結果では、新型コロナウイルス感染症関連の補助金がほとんどないなかで損益差額は対前年度比で▲3.9％と大きく減少しています。個人立歯科診療所の損益差額には開設者...

　令和4年歯科疾患実態調査において、8020達成者率は51.6％と発表されました。前回（平成28年）と比較してわずか0.4％増という結果です。平成23年（38.3％）から平成28年（51.2％）における直線的な増加が継続すると仮定した予測値、約65％とは大きく乖離しました。「8020運動」のギアをさらに上げるために、国民運動のあり方を再考する絶好の機会と思われます。 　30数年前、男性の平均寿命が80歳に達しておらず、8020達成者率が一桁台の時期に「8020運動」が始まりました。この運動は「う蝕の洪...

「予定なしや不明」は約9割 （本記事は、「クイント DENTAL GUIDE DIARY 2022」（3月分）より抜粋して掲載。） 　日本歯科医師会では「2040年を見据えた歯科ビジョン」を公表しています。その中で、「かかりつけ歯科医師が果たす役割と今後の働き方等」（2020年3月）報告書の一部に注目してみます。 　調査では2040年の近隣診療所の密度感をどう予測するかを尋ねており、約2割は多い、約44％は同程度と回答していますが、約3割は少なくなっていると...

日本人の約1,000 万人が歯科を受診 （本記事は、「クイント DENTAL GUIDE DIARY 2022」（2月分）より抜粋して掲載。） 　厚生労働省はどのような疾患で国民が医療機関に通院や入院をしているかを把握するために3年に1度「患者調査」を実施しています。平成29年調査結果の総患者数上位10位では、図3上のように、本態性高血圧患者が多く990万人、次いで歯肉炎および歯周疾患、2型糖尿病、歯の補綴、脂質異常症、う蝕、その他の歯および歯の支持...

1日当たり約60分の時間増 （本記事は、「クイント DENTAL GUIDE DIARY 2022」（1月分）より抜粋して掲載。） 　コロナ禍では、国民の受診控えが大きな問題となりました。そのなかで、歯科医療機関側の対応にも大きな変化が見られています。日本歯科医師会では、令和3年2月に各都道府県歯科医師会の協力のもと、院内感染対策の調査（回答者は183名で有効回答率は64.4％）を実施しました。その結果、衛生用品などの費用が前年度と比較し、約35％増加していることや医療廃棄物処理費用の増加などが明ら...

　近年、口腔と全身との関係を明らかにする研究が多く遂行されてきています。口腔健康管理が誤嚥性肺炎や熱発を抑制するという知見は、国民にも周知されてきました。日本は少子高齢化に加え新興感染症との闘いも同時進行となっていますが、口は感染の入口にもなり得る場所であり、これまで以上に口腔健康管理の重要性を啓発する機会になっていると思います。　日本歯科総合研究機構では、診療情報のビッグデータであるNDB（レセプト情報・特定健診等情報データベース）を数年前から分析してきました。このたび、歯数が少ない者、欠損が多い者ほどア...

　日本歯科総合研究機構では、NDB（レセプト情報・特定健診等情報データベース）を厚労省より貸与を受けて分析しています。2016年4月診療分データから年齢群の各歯種の存在率を分析したその結果の一部を解説します。● 研究方法 　2016年4月診療分レセプトのうち20歳以上を対象とし、歯周炎病名を有するレセプトから智歯を除く各歯種の存在率を算出しました。男性は245万件、女性は350万件を対象とし、同時期の各年齢別人口に占める割合は男性では4.9％、女性は6.4％でした。● 結 果 　図では、いずれの年齢群でも下...

　日本歯科医師会では2 年に一度「歯科医療に関する一般生活者意識調査」を実施しており、2020 年7 月末にコロナ禍の状況も含めてインターネット調査を実施しました。そのなかで、緊急事態宣言期間中と7 月末の歯科医療機関受診への不安に関する結果が明らかとなりましたのでご紹介します。● 研究方法　本調査は「歯科医療に対する国民の認知度・理解度の向上」を目指し、日本歯科医師会の広報展開の基礎資料とすることを目的に実施されています。全国の人口構造を加味した15 ～ 79 歳の男女1 万人を対象とし、2020 年7 ...

　プレジデント社の発行する雑誌（2012）において、リタイア前にするべきだった健康上の後悔に対する結果の第1位は「歯の定期健診を受ければよかった」と報告され話題となりました。日本歯科医師会では、2018年に実施した「歯科医療に関する一般生活者意識調査」でも同様の調査を行いました。● 研究方法 　本調査は「歯科医療に対する国民の認知度・理解度の向上」および「歯科に対する評価・イメージの向上」を目指し、日本歯科医師会の広報展開の基礎資料とすることを目的に実施されています。全国の人口構造を加味した15〜79歳の男...

　歯周病重症化予防は、歯科保健医療における喫緊の課題とされ、令和2年度診療報酬改定では、歯周病重症化予防治療（P重防）が歯科診療報酬に新設されました。今回の改定によって、これまで歯周病安定期治療（SPT）の対象にならなかった患者でも早期の歯周病管理ができるようになりました。今回は、SPTの算定状況を直近の第4回NDBオープンデータ（平成29年度）を用いて検討しました。● 研究方法 　平成29年4月から平成30年3月までの1年間における外来のSPT1とSPT 2の総件数を、現在歯別の3群について算出しました。...

　新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、政府から緊急事態宣言が出されました。そこで日本歯科医師会では各都道府県歯科医師会の協力を得て、歯科診療所における経営状況などを緊急に把握し、今後の対応への基礎資料を得る目的でアンケート調査を実施しました。今回は、令和2年3月・4月の歯科診療所における経営状況について整理しました。● 研究方法 　各都道府県歯科医師会の任意の協力により、406件の有効回答を得ました。個人立歯科診療所は315件（77.6％）を占めました。● 結 果 　個人立歯科診療所（315件）の結果...

　厚生労働省は、いわゆるビッグデータといわれるNDB（レセプト情報・特定健診情報等データベース）データを用いて基礎的な集計表（NDBオープンデータ）を年に1度公表しています。今回は、第4回のNDBオープンデータ（平成29年度診療分）を用いて、男女別の歯科外来の受療率を検討しました。● 研究方法 　平成29（2017）年4月から平成30（2018）年3月までの1年間の外来における基本診療料の中の「歯科初再診料、電話等歯科再診料等」および在宅医療の「歯科訪問診療1～3（診療所分）および初再診での歯科訪問診療等」...

　患者調査は、統計法により規定される基幹統計であり、病院や診療所を利用する患者の傷病の状況等の実態を把握するために3年ごとに実施される貴重な調査です。その2017（平成29）年調査の総患者数に着目しました。● 研究方法 　患者調査では、総患者数を調査日に継続的に医療を受けている者（調査日には医療施設を受療していない者も含む）と定義して、再来患者数や平均診療間隔等のデータを用いて推計しています。2017（平成29）年患者調査の上巻第62表（総患者数、性・年齢階級×傷病小分類別）を用いて、もっとも総患者数が多い...

　日本歯科総合研究機構において取り組んでいるNDB（レセプト情報・特定健診等情報データベース）を用いた分析結果より、歯数と誤嚥性肺炎による医科受診との関係を解説します。● 研究方法 　2012（平成24）年4月診療分レセプトにおいて、「歯周炎病名」「欠損歯病名」を有する歯科レセプトと、同月の医科レセプトの両方を有する65歳以上を対象としました。対象レセプト件数は、歯周炎病名が166万人（うち誤嚥性肺炎病名による医科受診者2,032名）、欠損歯病名が35万人（うち誤嚥性肺炎による医科受診者437名）でした。歯...

　日本歯科総合研究機構で実施した病院への調査（2017年10月実施）および郡市区歯科医師会への調査（2017年11月実施）からみた病院と歯科医師会との連携状況について解説します。● 研究方法 　2017年7月時点で、各厚生局に公表されているすべての病院を対象に、歯科標ぼうの有無別に医科歯科連携の状況について郵送調査を実施しました。歯科標ぼうのある1,745病院と歯科標ぼうのない6,692病院の有効回答率は、それぞれ62％と37％でした。同時期に全郡市区歯科医師会（746）へ郵送調査を行い、有効回答率は82％...

　日本歯科医師会では、2年に一度インターネットを活用した大規模な一般生活者の意識調査を実施しています。2018年4月に実施された調査結果についてご紹介いたします。● 調査の目的および方法 　本調査は「歯科医療に対する国民の認知度・理解度の向上」および「歯科に対する評価・イメージの向上」をめざし、日本歯科医師会の広報展開の基礎資料とすることを目的に実施されています。全国の15～79歳男女1万人を対象とし、2018年4月20日、21日にインターネットを利用して実施されました。● 結 果 　1万人の対象者のうち、...

　日本歯科総合研究機構において取り組んでいるNDB（レセプト情報・特定健診等情報データベース）を用いた分析結果より、現在歯数と医科医療費（中央値）の関係を解説します。● 研究方法 　平成24年4月診療分レセプトにおいて、医科と歯科の両方を受診し、「歯周炎」病名を有する50～79歳の患者のレセプトを対象としました。医科医療費は1か月間の外来・入院・DPC・調剤にかかる医療費を合計しその中央値を算出し、現在歯数は歯周炎病名の歯式から推計しました。活用したレセプト件数は、それぞれ50歳代（327,689件）、60...