旬の食材をふんだんに使用したお通し6品からスタート。 　「コノ花まひろ」という日本酒ダイニングをご紹介します。中洲川端駅から徒歩5分ほど、中洲の喧騒から離れた静かな路地に佇む築70 年の古民家を改築した当店は、天井が高く開放的です。店内中央には一枚板のカウンター席が配置されており、季節の野菜を中心としたお料理と、約20 種の日本酒やさまざまなお酒が楽しめます。 　お料理は基本的におまかせコース料理です（前日までに要予約）。お手製の佃煮や野菜の素揚げなど約6 品が盛られたお通しからスタートし、野菜のスープ...

医科の中の1つの診療科として　当院は、いわゆる口腔内の外科的処置を行う口腔外科治療だけではなく、地域の歯科診療所で対応が困難な有病者・障害者歯科、周術期口腔機能管理、非経口摂取患者の口腔粘膜処置などの口腔ケア、さらに摂食嚥下リハビリテーションも行っています。病院歯科口腔外科としてはやや特殊な診療スタイルをとっていますが、このスタイルが確立されてきた理由は当院の置かれた環境にありました。　当院が位置する八女筑後医療圏は高齢化率が30%を超えており、当科の受診患者の70%以上は65歳以上の高齢者です。院内他科で...

禍を転じて福と為す　2019年10月に外来診療を開始し、順調に外来患者さんの受診は増加しました。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大するにつれ、歯科口腔外科の診療体制の見直しをする必要がでてきました。　当院は感染症指定病院ではありませんが、地域医療支援病院として新型コロナウイルス感染患者の受け入れを始めました。院内の感染管理委員会主導で専門病棟を決定し、他の患者さんと動線が重ならないように検査移動や食事配膳方法など、細部まで検討が重ねられました（図1）。また、市中に感染者が増加するにつれ、救急外来だ...

最期まで家族と一緒の食卓で同じ食事を口からとれる喜び　外来診療を開始して1か月ほど経ったある日、院内泌尿器科の医師から急患の診察依頼がありました。前立腺がん（T4N1M1、StageⅣ）の患者さんで、多発骨転移に対して数年前から抗RANKL抗体を毎月投与されていました。　半年ほど前に右側下顎大臼歯の疼痛があり、近隣の歯科医院を受診したところ、「抜歯適応だが、まわりの骨もすでに悪くなっているのでどうしようもないです。抜いても痛みが続きますよ」というような説明を受けたとのことでした。当日すぐに抜歯され、抜歯後も...

地域連携に主軸を置いた口腔外科診療の実現へ　2019年9月、私が公立八女総合病院（以下、当院）に入職してから1年6か月後にようやく歯科口腔外科の診療室が完成しました。前回までに述べてきたとおり、診療室完成までは耳鼻科の診療台とポータブルの歯科診療器材を使用していました。私もスタッフも歯科診療台を早く使いたいという気持ちが強かったため、関係者に協力していただきながら診療室完成から1週間後には新診療室の使用を開始しました。基本的な診療機材は一般歯科診療所と同じものですが、設置やレイアウトについては自力歩行ができ...

ゼロからはじめる診療室づくり　公立八女総合病院には、歯科にかかわった経験のあるスタッフがいないため、まずは歯科治療に必要な設備について自分でリストアップしなければなりませんでした。とはいえ私も大学病院の口腔外科に長く在籍し、一般歯科には月に数回非常勤勤務をする程度でしたので、歯科治療に必要な設備や備品についてほとんど知識がなくまさにゼロからのスタートです。　そこでまず、過去に勤務したことのある一般歯科医院や近隣の病院歯科口腔外科の先生にご相談や見学をさせていただいて、必要な機器を確認することからはじめました...

地域における二次医療機関としての診療体制確立に向けて　公立八女総合病院（以下、当院）で歯科口腔外科が発足した当初は、医科から依頼された口腔内の応急処置やNST（栄養サポートチーム）などのチーム医療に加えて、がん治療の患者さんに対して周術期口腔機能管理としての口腔内清掃や粘膜ケアに特化した口腔ケアを行っていました。耳鼻科に間借り中の仮設診療室でもたいして不便は感じていなかったのですが、ある日、歯科口腔外科の外来診療室の整備を本格的に検討するきっかけとなる出来事が起こりました。　当院には歯科診療室が整備されてい...

歯科のジェネラリストが求められる時代　私は2018年4月より、急性期病院である公立八女総合病院（以下、当院）の歯科口腔外科に勤務を開始し、耳鼻科の診療室を間借りして歯科診療を行ってきました。当院は大学病院から出向してきた先生が医局員の大半を占めており、年に数回は各科で教授診察日があります。耳鼻科の診療室をお借りすることになって初めての耳鼻科教授診察日は、口腔外科が同じ診療室を使っていることをとがめられるのではないかと非常に緊張しました。しかし口腔ケアや嚥下リハビリテーションを中心とした診療を行っている旨をご...

歯や口のプロとしてできること　前号で述べたとおり、筆者の勤務している公立八女総合病院（以下、当院）にはこれまで歯科や口腔外科が存在したことがなく、診療室のない状態から歯科診療を開始しました。耳鼻科に診療室を借り、耳鼻科用チェアに訪問歯科診療用のユニットを設置して、まずは術前後や化学療法前後の口腔ケアから始めました。歯科医師と耳鼻科医師が共同で診療を行う風景は全国的にもめずらしいと思います（図1）。歯科口腔外科と耳鼻科の診療領域は重複する部分も多いため同じ診療室での診療は想像以上に利便性が高く、診療科の枠を超...

チーム医療を中心とした院内のつながり　公立八女総合病院（以下、当院）にはこれまで歯科や口腔外科が存在したことがなく、診療室や機材がまったくない状態から勤務が始まりました。歯科医師の採用が1か月前に決まった突然の新規開設でしたので、歯科医師が院内にいることを知らないスタッフが多く、院内での知名度を上げるため、まずはチーム医療に参画しました。　当院は、日本臨床栄養代謝学会（JSPEN）認定の栄養サポートチーム（以下、NST）稼働施設です。NST専門療法士認定教育プログラムを実施しており、専従看護師も配置されてい...

「縁」と「偶然」がつないだ新天地　全国の病院の約80% には歯科や口腔外科がありません。そのため、入院患者の口腔内の問題が放置されたまま、さらに劣悪な口腔状態となって高齢者施設や在宅へと居場所が移り変わっていくことも多いとされています。また、総合病院内で歯科は不採算部門になりがちであり、以前から閉鎖や縮小の動きがあることも事実です。しかし、誤嚥性肺炎、糖尿病や認知症など全身疾患と歯科疾患の関連が明らかにされるにつれて、新たに歯科専門職を雇用する病院も出てきています。　私は大学病院口腔外科在籍中に救命救急セン...

口腔外科中心から口腔機能の維持管理へ　私は現在、福岡県南部に位置する八女市の中核病院である公立八女総合病院の歯科口腔外科に医長として勤務しています。当院は23の診療科がある300床の総合病院で、月間救急車受け入れが約200台の急性期救急病院です。私は2005年に九州大学歯学部卒業後、第一口腔外科 （中村誠司教授） の教室に入局しました。医局では主に口唇口蓋裂の臨床や基礎研究、摂食嚥下リハビリテーションなどを中心に担当してきましたが、縁あって2018年4月より公立八女総合病院に入職しました。公立八女総合病院に...