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2021年5月号掲載

歯科医療の重要性と今後の方向性

歯科医療の重要性と今後の方向性

※本記事は、「新聞クイント 2021年5月号」より抜粋して掲載。

3月28日(日)、2020年度MID-G総会 特別講演会(MID-G主催、和田匡史代表理事)がWeb配信にて開催されました。本講演会では、田村憲久氏(厚生労働大臣)と山田 宏氏(参議院議員)の現職の国会議員2名が招聘されるという初の試みで盛会となりました。


 本欄では、山田氏と和田匡史氏(MID-G代表理事、徳島県開業)のディスカッションならびに、田村厚労大臣による現在のコロナ禍における歯科界へのメッセージの一部をダイジェスト版として掲載いたします。(編集部)
協力:一般社団法人MID-G、株式会社Doctorbook



次期参院選歯科組織代表が語る歯科のビジョンとは?

和田:2020年10月、日本歯科医師連盟の臨時評議員会にて次期参議院議員比例代表選挙の組織代表候補者として山田 宏先生(参議院議員)が正式に決定されました。まずは率直なご感想をお聞かせください。

山田:2022年4月に行われる予定の参議院議員選挙の日本歯科医師連盟における組織代表として推薦をいただきました。

 これまで、日本歯科医師連盟の組織代表は全員の方が歯科医師の先生でした。今回、初めて歯科医師ではない私が組織代表ということになり、これまでの歯科に関するさまざまな活動をご評価いただいたものと、たいへん感謝しています。
 しかし一方で、やはりこれまで歯科医師が職域代表を務められてきたので、「歯科医師ではなくて大丈夫なのか」というような不安の声もあるということを聞いています。それはそうだろうと思います。
 ただ、私が申し上げたいのは、国会また政治の場というのは、政策を実現するという形、つまり結果を残すことです。学術の研究会などのように専門知識をもって発表する場所ではありません。日本歯科医師連盟は、歯科界が抱えているさまざまな課題を解決し、そして必要な政策を実現することで、法律または制度にして予算化することを目指しています。現に私は杉並区長のときに、行政の責任者としてそのようなことを取り組んできたわけです。
 ですから、私は歯科に対して強い思いがあります。またMID-Gをはじめとする歯科界の先生方にもいろいろご意見をいただきながら、きちんと形に残していくということを通じて組織代表としての責任を果たしていきます。また、不安をもっておられる方がいたら、その不安を吹き飛ばすという自信があります。

 そういった意味では、単に歯科界のことに携わるだけではなく歯科界を良くすること、または良い制度をつくっていくことを通じて日本を良くしていくことに取り組んでいきたいと考えています。



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歯科衛生士不足、復職支援の解決策 歯科に対する評価を上げる

和田:私たちMID-Gは、臨床現場をとおした学術、スタッフや患者さんを含めた教育、そして歯科医療を継続していくための経営といった、「学術」「教育」「経営」この3つのバランスを非常に大切にしているグループです(図2)。

 私たちが日々行っている歯科医療はチーム医療であり、貴重な医療資源の問題の1つとして歯科衛生士不足があります。結婚や出産などのライフイベントによって復職できず、院長先生が理想とする歯科医療がなかなか提供できないということもあるかと思います。

山田:歯科衛生士の資格保持者は約20万人いると聞いており、臨床現場に従事されている方は10万人ほどかと思います(図3)。特に女性が多い職場ではありますが、今、和田先生にお話しいただいたように、歯科衛生士不足については多くの声を聞いています。

 国としては、来年度の予算の中に歯科衛生士の復職支援についてどのような仕組みで取り組むかということを考えることになっています。たとえば、歯科衛生士みずから登録してもらい歯科診療所とマッチングを行うやり方が良いのか、あるいは歯科診療所のほうで求人募集するハローワーク型などを検討していると認識しています。

 また、歯科の診療報酬の評価を上げる必要があります。歯科界の正当な評価の中には、歯科衛生士または歯科技工士に対する評価が低すぎるということも含まれます。欧米における歯科衛生士の職業は、かなり良い地位にありますから。

 国民全体が歯科健診を実施するようになると、今以上に歯科衛生士が足りなくなります。そのようなことを考えると、歯科医師の先生方はさらに忙しくなるわけですが、「健康政策のど真ん中に口の中の健康を」など、いくらそのようなスローガンを掲げたところで、それを支える歯科医療従事者がいなければしかたないわけですから、和田先生がおっしゃったように歯科衛生士の復職支援はたいへん大きなテーマだと思っています。
和田:ありがとうございます。今、山田先生のお話にもあったように、歯科衛生士だけではなく歯科医師の半分は女性です。歯科技工士も非常に数が少なく、受験者自体が少なくなっています。歯科技工士学校自体がどんどん減っているような状況ですので、歯科医療を担う人材の確保、歯科技工士にしても待遇の改善が大事だと思います。

山田:そうですね。やはり復職支援は急務ですね。歯科衛生士や歯科技工士の歯科医療従事者が働きやすい環境、診療報酬も含めてきちんと評価されるようにしていく必要があると思います。

 超高齢社会のなかで今後は歯科衛生士だけでなく、歯科医師が足りなくなる時代が到来するでしょう。歯科医師も高齢化して引退される先生方も増えてきていますから、歯科医師国家試験の改善を含めた歯科医師養成についても考えることが求められるのではないでしょうか。

図2 MID-Gの活動コンセプト。

図3 就業場所別にみた就業歯科衛生士数。平成30年衛生行政報告例〔就業医療関係者〕の概況より(編集部にて一部改変・作成)。

[PAGINATE] 災害時における歯科の役割と医療連携 口から食べるための多職種連携

和田:東日本大震災から10年経つなかで、最近では地震が頻発しています。東日本大震災時は、歯科医師による身元確認作業や歯科衛生士による口腔ケアなど、歯科の役割が注目されました。

山田:東日本大震災では歯科の重要性がより注目されたといわれています。避難所生活が長引いてくると、特にお年寄りは口腔のケアや入れ歯の洗浄が疎かになる、または口の中が汚くなった結果、誤嚥性肺炎による死亡率が増加したと。もし、その時にきちんとした口腔ケアを避難所で行うことができたならば、もっと死亡率を減らすことができたのではないかという報告もあります。

 東日本大震災以降、災害が多発していますので、当時の安倍総理にご説明して、災害時の歯科医療体制の確保のための予算を確保させていただきました。和田先生が歯科医師による身元確認作業への対応について挙げられましたが、東日本大震災時のご遺体の特定では歯の治療記録による照合が特に多く、大勢の歯科医師が身元確認作業で活躍されました。しかし、津波で流されてしまった歯科診療所では、その情報さえもなくなったということです。今後は患者さんの歯科情報をきちんとデジタル化して管理しておくということも必要でしょうから、口腔のケアと同様に災害時に備える対策はきわめて大切だと思っています。

和田:ありがとうございます。災害時には多職種連携の大切さも注目されました。私は今後の連携の1つとして、管理栄養士の活用に期待しています。私たち歯科医療従事者が歯科医療をとおして、噛めなかった口腔を噛めるようにした後の食事が大事であり、そこに医科、そして管理栄養士との連携ができればと思っています。

山田:災害のときではなくても、高齢者施設でもそのような連携が今後必要になってくると思います。

 西東京市では、連携の中に歯科が入っています。人間は、食べて、噛んで、しゃべって、笑って、食べられなくなるとフレイルが起こるということですから、噛めるようにする、食べられる、飲み込めるようにしてあげることまでは歯科が担当し、その後の食べることに関しては栄養士がかかわるようなシステムが各自治体で実践できると良いですね。

和田:私の歯科医院がある徳島では、宅配業者が高齢者宅にお弁当を宅配する時に管理栄養士を入れたらどうかというような試みが始まりつつあります。お弁当箱を回収する時に何を食べているかをチェックする仕組みです。

山田:なるほど。皆さん、このコロナ禍でデリバリーに関しては違和感がなくなり、むしろ生活の一部になっていることもありますから、そういった意味では、アフターコロナのことを考えると、特にその仕組みを利用した高齢者の健康管理というようなことが発想としては良いですね。

和田:そのような流れの中に歯科も入ってさまざまなコラボレーションができ、将来的にシステムができればという期待をもっています。

――本日はありがとうございました。



山田 宏議員(左から3番目)とMID-G理事ら。


田村憲久厚労大臣(写真中央)とMID-G理事ら。

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